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新疆ウイグル自治区の綿問題、アパレル業界に厳しい視線

 中国新疆ウイグル自治区で生産される綿に強制労働の可能性が指摘されている問題に関し、国内アパレル企業などへの厳しい視線が続いている。多くの企業が人権侵害との関連を否定しているものの、欧米当局は衣料品店「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングなどに厳しい態度をとっており、事態は収拾しそうにない。人権侵害と関連がないことを公的機関が認定する仕組み作りも目指されているが、同時に各企業が人権侵害に対して厳格な姿勢を示すことも重要となりそうだ。

 「人権問題は従来、非常に重要な経営課題との認識を持っている」

 ファストリの岡崎健最高財務責任者(CFO)は15日の決算説明会でこう述べた。同社はこれまで、関係工場は自治区になく、サプライチェーン(供給網)への監査でも「強制労働が確認された事実はない」と強調。岡崎氏は改めて、問題がないことに「自信を持っている」と力を込めた。

 しかし国際社会の厳しい目は変わらない。バイデン米政権は13日、自治区に関わる供給網を持つ企業に対し、法的な問題が生じるリスクがあるなどと警告する文書を発表。フランス当局もファストリなど日米欧の4社に対して、人道に対する罪の隠匿の疑いで捜査に入ったと報じられている。

 衣料品生産は紡績、染色、縫製などの工程で多くの下請けを抱える。情報統制の厳しい中国において企業が問題への関与が完全にないと示すことは「悪魔の証明」に近い。こうした中、肌着メーカー大手のグンゼは強制労働は認められなかったとしつつ、一部商品で使っていた新疆綿を別の素材に切り替えることを検討。ミズノも新疆綿の使用中止を決めた。

 一方、こうした証明を公的な機関に託そうとする動きもある。経済産業省の有識者検討会は今月、取引先の人権問題をチェックする指針を定めるよう業界団体に要求。生産工程の労働環境などに第三者機関がお墨付きを与える「国際認証」の有用性も示唆した。

 ただ、国際社会からの信頼を得るには人権侵害への関与を否定するだけでは不十分だとの声もある。日本企業の多くは中国でのウイグル人弾圧に言及すること自体に及び腰だからだ。三菱UFJリサーチ&コンサルティング経営企画部の吉高まり副部長は「自治区での人権問題をどう考えるか、経営トップがメッセージを発することも重要だ」と話している。(加藤園子)

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