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三菱電機不正検査に鉄道会社が怒り 代わりに製造頼めるメーカーなく

 三菱電機が鉄道向けの空調機器やブレーキに使う空気圧縮機で不正な検査を長年行っていたことが明らかになり2週間余りが経過した。不正検査の対象となった機器の導入台数は依然不明だが、関西の鉄道会社では「大半があてはまる可能性がある」(関係者)という。「契約違反」の状態にもかかわらず代わりに製造を頼めるメーカーはなく、各社は怒りと不満を募らせている。

 新幹線にも導入

 「彼らは契約違反を続けていた。車両に携わる社員らは『だまされていた』という気持ちでいる」「三菱電機の担当者が説明に来たが、詳細は分からないままだ。納得できない」

 今回の不祥事をめぐり、関西の鉄道会社関係者らは三菱電機への強い批判を口にする。

 不正は6月29日に明らかになった。三菱電機は空調機器では規定より負荷を下げた検査などを行っていたほか、空気圧縮機では、以前製造されたモデルの検査結果を流用するなどしていた。架空のデータで検査結果を作成する「専用プログラム」まで使っていた。

 関西の鉄道会社は三菱電機製の空調機器と空気圧縮機を幅広く導入。JR西日本は空調を6100台以上、空気圧縮機を8台導入しており、新幹線でも使っていた。

 阪神電気鉄道は保有する全358両すべてで三菱電機の空調、空気圧縮機を利用。空調は1095台に上る。近畿日本鉄道と南海電気鉄道は、特急に三菱電機製の空気圧縮機を使用していた。

 損害賠償請求も

 このうち不正検査された台数を三菱電機は明かしていないが、鉄道会社の関係者は「大半が不正検査が行われていた期間に該当する」とした。

 鉄道各社は日常的に車両の定期点検を行い、運行前もブレーキなどを確認しており「いずれの機器も安全性に問題はない」としている。三菱電機は9月、不正問題をめぐる調査結果を公表する計画という。

 ただそれでも、鉄道会社からは「(鉄道会社側が求めた検査が行われず)要するに、契約不履行の状態だった」(大手私鉄)との不満が上がる。

 別の鉄道会社関係者は「不正検査された可能性がある空調機の台数が分かれば、当然修理や交換を求める。万が一安全性に関わる問題が新たに出れば、損害賠償の可能性もあるだろう」と指摘する。

 もっとも、三菱電機に匹敵する機器の製造や供給をできる業者がほかになく、鉄道各社は三菱電機との契約を切れずにいる。

 鉄道業界に詳しい岩井コスモ証券の饗場(あいば)大介シニアアナリストは「軽微な検査の不正でも、ときには重大な事故につながりうる。鉄道各社は今後、安全検査などで一層の負担を強いられるだろう」と指摘している。(黒川信雄)

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