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SDGsな「お中元ビール」が登場、フードロス削減狙う

 もったいないをおいしく-。コロナ禍で行き場のなくなった食材を有効活用したビールの新商品を、阪急百貨店と大阪のビール醸造会社が共同開発した。フードロスを削減しながら、新感覚の風味を楽しめるビールのセットは同百貨店のお中元商戦に登場。日本の贈り物文化にも国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の意識が浸透し始めている。(北村博子)

 食材を無駄にせず

 「ビールにアンズを加えたらどんな味になると思います? 多分驚かれると思いますよ」

 同百貨店の中元商戦に登場したのは、その名も「「心で味わうクラフトビールセット」。オレンジとアンズ、イチゴ、そしてエゴマの風味をそれぞれ楽しめる。製造を手掛けたのは、元銭湯を醸造所にリノベーションした「上方ビール」(大阪市東淀川区)だ。

 原材料となる果物は、国産果実を使用する大阪のジャムメーカーから、コロナ禍で在庫が積み上がっている青果を仕入れた。まず、オレンジとイチゴは黒ビールに合わせた。アンズに関しては上方ビールの志方昂司社長も「うまいこと香りが出せず手を焼きました」と明かすが、苦労の末に酸味が特徴のビールができあがった。

 また、規格外のエゴマの葉を活用したビールづくりにも挑戦。くせのある香りが特徴なため、ホップをたくさん使う苦みの強いビール「IPA」に仕上げており「イチゴ、エゴマ、オレンジそれぞれのフレーバーを楽しんでもらえる」と志方社長は自信をみせる。

 上方ビールは、醸造のさいに出る搾りかすの大麦を家畜のえさや農家の土壌改良用に提供したり、加工食品の材料に使ったりするなどして、産業廃棄物0%を目標に努力と工夫を重ねてきた。阪急百貨店とのコラボ商品について志方社長は「クラフトビールの多様性、そしてビールづくりでもフードロス削減に取り組めることが伝われば」と期待する。

 止まらない廃棄処分

 上方ビールと、同百貨店の協業は、今年2月にバレンタイン商戦で、廃棄処分になるオレンジとカカオの皮を利用してビールをつくったのがきっかけ。阪急百貨店を経営する阪急阪神百貨店(大阪市北区)のフード新規事業開発部の中村有希さんは「これまでも常々、製造過程で出る食品廃棄物の問題や、仕入れ先の農家で売れ残りや規格外の青果の行き先に困っているという話を聞いて、何かできることはないかと思っていた」と振り返る。

 さらに、新型コロナウイルスがフードロスの問題を拡大させている。イチゴは海外輸出がストップし、オレンジも例年通り出荷できていないという。それらの食材を仕入れたジャムメーカーも、百貨店や道の駅などでの売り上げが激減している。「また、アンズはもともと需要が少なく生産者も減る一方なので、農家継承の一助になればとして今回お中元での活用の提案がありました」と中村さん。さまざまな理由で食材が廃棄されている課題に、新しい取り組みは「ビールにする」という一つの活用法を示した。

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