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「売れるわけない」日本発のドリップパックコーヒー、本場・米国で普及の理由

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 スターバックスに代表されるシアトル系カフェも、2015年に日本に上陸したブルーボトルコーヒーも米国発。だが、そのコーヒー消費大国には、日本では当たり前の「あるもの」がなかったという。湯を注ぐだけで挽(ひ)き立てのコーヒーが楽しめる「ドリップパック」だ。商機は意外なところに隠れているもの。米国にはドリップパックがないことに気づいたコーヒー好きの日本人が米国で成功を収めた。日本では馴染みのない企業である「NuZee」のコーヒーは今や、世界3カ国に工場を持つまでに成長した。

 「ないなら、差別化できる」

 所変われば品変わる。コーヒーの本場でありながらドリップパックがなかった米国に、コーヒーの受託製造販売を行う「NuZee」のドリップパックコーヒーが浸透している。

 「東日本大震災の時、友人から『水を送ってくれ』と言われたのがきっかけでした」

 事業のきっかけを振り返るのは「NuZee Inc.」(ニュージー・インク)の創業者で社長の東田真輝さん(49)。異色の経歴の持ち主で、韓国で業界3位になった金融会社を設立。日本でも証券会社を設立した事業家でもある。経営していた会社を売却し、38歳でアーリーリタイアを実現。2010年に家族でニュージーランドに移住したという。

 2011年3月、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で首都圏のスーパーからは飲料水が姿を消した。友人に頼まれ、ボランティアで1本2.5ニュージーランド・ドル(当時約150円)のペットボトルの水を何ケースも日本へ送った。ニュージーランドの水は日本と同じ軟水。「甘くておいしいと評判だったので、アメリカでビジネスにできないかと考えた」(東田さん)という。

 しかし、ビジネスの世界は甘くはなかった。ニュージーランドに由来する「NuZee」ブランドで水を販売するも、「水では差別化できず、売るのは難しい」と思い知らされた。

 ならばと、今度はエナジードリンクの販売に方向転換。集中力の向上やダイエット効果を見込んでコーヒーをブレンドした「エナジーコーヒー」を販売した。「アメリカにはドリップパックのコーヒーがない」という話を聞いたのは、その時だったという。

 「ないなら、差別化できる。きっと売れるはず」

 結果的には、その読みが当たり、事業は急拡大する。

 「ドリップパックならコーヒーマシンがいらない。どこでも手軽に抽出できます。それに、何と言ってもエコフレンドリー(環境に優しい)という点も評価されました」

 使い捨てのドリップパックが「エコ」というのは少し意外な印象もあるが、それには理由があった。米国では、プラスチックでできたコーヒーカプセル専用の「K-Cup」と呼ばれるコーヒーマシンが一般的で、年間150億杯分ともいわれるプラスチック容器が排出されていたからだ。

 海や土に還らない非生分解製品のプラスチックに対し、ドリップパックは生分解性の紙フィルター。カップの上にのせ、湯を注ぐだけでよい。米国内での環境意識の高まりも追い風となった。

 ただ、販路の拡大は一筋縄ではいかなかったという。「こんなもの売れるわけがない」と鼻で笑われたことも。「アメリカの食品業界の事情も知りませんでしたから、たらい回しにされたり、製造工場の認証を取得するのに2年も費やしたり、最初は苦戦しました」と振り返る。

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