金融

競争している場合でない…相次ぐ経営統合、東北地銀に起きている事

 青森県経済を牽引(けんいん)してきた青森銀行(青銀、本店・青森市)とみちのく銀行(みち銀、同)が経営統合の協議入りに基本合意、来年4月をめどに持ち株会社を設立し、令和6年4月をめどに合併する方針だ。東北では地方銀行グループ「フィデアホールディングス」(本社・仙台市)と東北銀行(本店・盛岡市)も経営統合の協議入りで合意した。背景には人口減少や低金利政策などで地方銀行を取り巻く経営環境が厳しさを増す中、生き残りを懸けた経営基盤の強化がある。

 コロナが地銀の経営直撃

 「ようやくここまで来ましたね」。5月14日、青銀とみち銀の両頭取による経営統合の記者会見が行われた青森市の大会議室。両行の行員が笑顔で言葉を交わす光景が見られ、高揚感が漂っていた。そこには長年、ライバル行としてしのぎを削ってきた緊張関係はなかった。

 貸出金1兆8563億円の青銀に対し、みち銀は1兆7212億円(いずれも今年3月末)とほぼ拮抗(きっこう)し、両行合わせて県内シェアは7割を超える。ただ、超低金利による「利ざや」が縮小し、顕在化している少子高齢化や人口減少に加え、長引く新型コロナウイルスの影響が地方銀行の経営を直撃。両行とも経費節減や新たなビジネス展開などによって経営の健全化に取り組んではいるものの、大きな収益を生むまでには至っていないのが実情だ。

 菅発言で埋まる“外堀”

 こうした中、菅義偉首相(当時、官房長官)が昨年9月、「地銀の数が多過ぎる」と地方銀行の再編を促す発言をし、11月には地銀の統合に独占禁止法を適用しない特例法が施行。経営統合に向けた“外堀”が埋まる中、両行が将来を見据えた場合、取るべき選択肢は限られていた。

 「まずは一歩を踏み出せたことに大きな意義がある。地域とともに成長する新しい強いグループになる」と青銀の成田晋頭取。みち銀の藤沢貴之頭取も「地域のために統合がベスト」と話し、両頭取とも「地域第一」を強調する。

 両行ともそれぞれ強みがあり、青銀は自治体や中堅以上の企業と取引が多く、みち銀は個人融資や農業分野などで一日の長がある。経営統合によって互いの“弱点”を補完する形となり「顧客にとっては相乗効果が出てくる」(成田頭取)ことが期待される。

 一方で、重要なのは単なる延命策だけの経営統合ではなく、顧客本位の姿勢で蓄積している情報を生かして経済活動を支え、地域活性化に寄与することだ。

 競争している場合でない

 ほぼ同規模の第一地銀が県内に2行存在するのは全国的にも珍しい。青森中央学院大の竹内紀人教授(地域金融論)は今回の経営統合に「世の中の流れ、政府の動きが促した。低金利政策によって本業で儲けられないことも事実で、将来的な合併は必要不可欠」と肯定的に捉える。

 その上で「アフターコロナを見据え、地銀として地域に何ができるかを考えた場合、余計な競争をしている場合ではない。従来の貸し出しだけでは銀行自体が存在しなくなる」と地銀のあり方に警鐘を鳴らす。

 両行は改正銀行法の規制緩和を受け今後、人材育成や起業支援、コンサルティング業務など新規事業への取り組みを加速させる方針だ。

 東北では7月2日、荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田市)を傘下に置く地方銀行グループ、フィデアホールディングスと東北銀行も来年10月の経営統合を目指し、協議することで合意した。

 竹内教授は「それぞれの銀行がどこに個性を持ち、何を売りにするのか。これからいろいろな形が出てきてもおかしくない」。地銀再編の流れが今後、さらに加速しそうだ。

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