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生活改善・人材育成にゲーム要素 「ゲーミフィケーション」への期待

 簡単操作で楽しむ

 ゲーミフィケーションが達成するのは個人の楽しみだけではない。企業が従業員のやる気を高めるために人事制度に取り入れたり、顧客とのコミュニケーションに応用したりといった用途もある。またタクシー会社や運送会社向けに、急ブレーキや急ハンドルといった運転時の挙動をスコア化し、運転技術の向上に役立てるアプリも開発されている。

 米国の調査会社によると、世界のゲーミフィケーション関連市場は、20年に87・3億ドル(約9700億円)規模となった。27年まで年平均20%以上成長し、350億ドル(約3兆9000億円)に拡大するとも予測されている。

 一方、ゲーミフィケーションは単にゲーム要素を取り入れれば楽しくなるといった単純なものではない。

 サービスを広く受け入れてもらうためには、利用者とサービスの間をどのようにつなぐかという「ユーザーインターフェース(UI)」の考え方が肝要だ。多くのゲームは説明書がなくても直感的に操作できるように工夫がこらされ、簡単な操作で子供から大人まで楽しむことができる仕組みに作りこまれている。あるゲーム会社首脳は「UIこそゲームの命」とし、ゲーム業界が築き上げてきたノウハウに自信を示す。

 日本には任天堂やソニー・インタラクティブエンタテインメント、スクウェア・エニックス、カプコン、コナミなど、家庭用ゲーム機大手からソフトメーカーまで世界有数のゲーム会社が集積している。スマホ向けゲームでもDeNAなどがアジアを中心に海外展開を加速している。

 日本におけるゲーム産業の厚みはゲーミフィケーションの開発や導入を後押しする要素だ。ゲーミフィケーションの浸透は、デジタル化で出遅れた日本経済を刺激するカギになる可能性もある。

 20兆円ゲーム市場 アジアが過半数

 オランダの調査会社ニューズーによると、2021年の世界のゲーム市場は前年比1・1%減の1758億ドル(約20兆円)で、新型コロナウイルス禍で急拡大した前年と同水準となる見込み。スマートフォンとタブレット端末向けの市場規模の合計は市場全体の5割を超えた。

 世界のゲームプレーヤー数は同5・3%増の30億人で、アジア太平洋地域が16億1500万人と過半数を占める。中国市場の拡大が主な要因で、ゲーミフィケーション市場も、伝統的な北米・欧州市場と新興の中国市場が牽引(けんいん)するとみられている。

 ただ、巨額の資金でゲームを開発する中国メーカーの成長は著しく、日本市場は攻勢をかけられているのが現状。ゲームから広がっていくゲーミフィケーション市場も見据えた覇権争いも激化するとみられる。(高木克聡)

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