鉄道新潮流
5Gが導く高速自動運転 サービス・現場変革も JR東
「現場では、地盤の整備や鉄筋コンクリートの施工開始、施工完了時など、さまざまなタイミングで担当者立ち会いによる確認や監督が必要だ。千手発電所には群馬県高崎市の事務所からその都度出向くことになるが、往復4時間もかかる。5Gの活用でこの時間と手間が大幅に軽減される」(高津徹・建設工事部技術戦略グループ課長)。同社はこのリモート監督を来年度から順次導入していく。
将来的には5Gが高速鉄道の自動運転も可能にする。同社は昨年から新幹線での検証を続けてきた。今月17日に上越新幹線の新潟駅と新潟新幹線車両センター間の約5キロの区間で「E7系」の回送列車を使って実施した自動運転試験では、地域限定の高速通信規格「ローカル5G」を活用。車上から伝送される運転情報を指令所で受信し、指令所は加減速や停止などの信号を発信した。車両前方の高精細画像も見ながら車両を遠隔制御した。
「5Gについては大容量データを低遅延でやり取りできるかがポイントとなる。新幹線の自動列車運転装置(ATO)も並行して開発し、自動運転の実現につなげたい」(生田氏)という。
5Gをめぐっては京浜急行電鉄が綜合警備保障などと高精細画像や人工知能(AI)を活用した警備システムの実証実験で利用するなど、各社で実用化をにらんだ動きが加速している。この分野に詳しい日大の中村英夫名誉教授は「多用が見込まれる5Gだが、将来は自前の設備にとどまらず、携帯電話事業者の通信網も活用して効率化を進めれば、鉄道会社は安全や経営改善に向けた取り組みにより注力できるようになる」と話す。(青山博美)