高論卓説
自然災害多発で高まる必要性、求められる本格的な病院船
戎崎俊一
また、東日本大震災による津波大災害を受けて2011年に、「災害時多目的船に関する検討会」が内閣府に組織され、翌年に報告書をまとめている。その結論は、費用がかかること、被災地付近への展開に時間がかかること、地震・津波による港湾被害のために病院船への搬送に問題があること、離島への巡回医療としては設備が過大であること、などから専用の病院船というよりは、上記の「野外手術システム」の既存艦船への搭載で十分とする内容となっている。
しかし、わが国における病院船の必要性は、近年増大している。18年は台風が連続して日本列島を襲い繰り返し深刻な水害を起こしている。インドネシアは2回も甚大な津波被害に見舞われた。私見では、これらは太陽活動の不活発化による小氷河期の到来によるものである。小氷河期においては、ジェット気流の蛇行が頻発し、極端な気候が常態化する。火山噴火や地震も多い。したがって、このような大災害頻発状態は、今後少なくとも10年、長くて100年続くと覚悟しなければならない。日本が連携をより強めるアジア・太平洋地域全体を見ると、常にどこかで病院船を必要とする大災害が発生していることになろう。
もちろん、病院船のデザインと運用について一層の工夫が必要である。被災地からの患者輸送を円滑にするために、ヘリコプターやエア・クッション型揚陸艇の運用能力の強化が重要である。ヘリ空母や揚陸艦機能を備えた艦船との一体運用も視野に入れるべきだ。逆に、これらの既存艦艇への病院機能の拡大という現在の方向性も強化すべきだろう。少なくとも、1988年に導入された現在の野外手術システムの機器の更新・充実は必須だと思われる。