弱い立場つけこみ「知財」横取りする大手 中小が技術を守る方法はあるか?
更新同社は、新たな取引先に部品の納入を開始する前に必ず秘密保持契約を結ぶほか、部品の図面データを特定の社員しか知らないパスワードで社内パソコンに保存するなどノウハウの流出防止に神経をとがらせる。
ただ、その一方で、取引先の情報を漏らさない取り組みも徹底するのがポイントだ。例えば、取引先の関係者がJKBの工場を見学する際には、他の取引先の部品の生産ラインをプラスチック製の板で隠し、ときには生産そのものを中断する。他にも、顧客の情報を保存する社内パソコンのインターネット回線を遮断するなどサイバー攻撃への対策も充実させる。すると、取引先は「そこまで徹底するのか」と機密情報をやりとりするに足る相手と信頼するという。
JKBの平井和夫会長は「自社と取引先の双方の秘密を守る対策を強めることで、取引先からは嫌な顔をされるどころか、信頼を勝ち得ることができた」と話す。
ただ、JKBはむしろ少数派だ。下請けが大手の取引先に自社の技術の保護を訴え過ぎたあまり煙たがられて受注を減らされたり、逆に我慢して秘密保持契約を結ばないままになっていたりするケースも多い。技術力は競争力の源泉だけに国は中小の知財支援を強化する必要があるが、中小企業にも、したたかに技術を守り抜く意識と取り組みが求められる。

