美術教育の大きなブラックホール デッサンを学ぶビジネスパースンたち
ここで何十年前にも受けた日本の小学・中学・高校での美術の授業を思い起こし、ロジックでの理解・表現の仕方を教えてもらったこともなかったが、いったい美的判断力も鍛えられただろうか?と疑問に思えてきた。
「自分がきれいだと思うものを描きなさい」と言われた覚えはあるが、きれいと思う理由の説明を求められた記憶はあまり残っていない。たとえ聞かれたことがあっても、印象に残るほどではなかったのではないか。「絵は心で感じるものだ。頭ではない」とのセリフだけが耳に残っている。
今の日本の学校教育をぼくは知らないが、アート&ロジックのコースに来る比較的若い人たちが「街の絵画教室は感性で描け、と言われるだけで満たされない」と話すのを聞くと、基本的な認識に大きな変化は生まれていないに違いない。つまり観察力も美的判断もさほど重視されていなかったのではないか。そして美術史もまともに教えるカリキュラムにもなっていない。
日本の美術教育には、とてつもなく大きなブラックホールがあるような気分になってきた。(安西洋之)
【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)
上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『デザインの次に来るもの』『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。