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茅葺き屋根の集落が日本の原風景描き出す 美しき「隠れ里」[菅並集落/滋賀県]

豪雪地帯に点在する茅葺の集落

 【ONESTORY】滋賀県の最北端、長浜市余呉町は全国最高クラスの豪雪地帯として知られる地域です。菅並集落は、茅葺き屋根の農家が数十軒集まる素晴らしい村です。

 現在、ほとんどの家は屋根にトタンを巻いていますが、下の家屋はきちんと残されています。規模や美しさで言ったら、有名な飛騨高山や白川郷のレベルと言っていいでしょう。これほどの光景は全国各地を見ても滅多にありません。ある意味、関西の白川郷ともいえる。最初に訪れた時、日本にまだこうした景色があるのかとショックを受けたと同時に、驚きました。これも「隠れ里」のひとつと言えます。

将来に受け継ぐべき農村の景色

 五条のような商人の町でもなければ、宿場町でもありません。菅並集落は、農家です。この成り立ちがまた興味深くもあります。遠目には美しく保存されているようにも見えますが、残念ながら時代とともにどんどん壊されているのも事実。国や県のプロテクションがかかっておらず、自治体も関心を持っていないようなので、このままではいつかなくなってしまうでしょう。

 もちろん、この希少な集落を保存しようと活動している人や関心のある住民もいるようですが、将来を心配しています。興味がある人は見ておくべきです。集落の奥には立派なお寺「洞寿院」もあり、境内からは集落の街並みも見下ろせます。この美しい景色がいつまでも残ることを祈るだけです。

Alex Kerr(東洋文化研究家)

1952年生まれ。イエール大学で日本学を専攻。東洋文化研究家、作家。現在は京都府亀岡市の矢田天満宮境内に移築された400年前の尼寺を改修して住居とし、そこを拠点に国内を回り、昔の美しさが残る景観を観光に役立てるためのプロデュースを行っている。著書に『美しき日本の残像』(新潮社)、『犬と鬼』(講談社)など。

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