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【ビジネス解読】訪日観光に忍び寄る“中韓リスク” 危険度上位の都道府県は

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 中国からの訪日客の大幅な拡大は、安倍晋三政権の下で進んできた日中関係の改善も一因だ。だが、米中の覇権争いで、この先、日米同盟を重視する日本と中国の関係は悪化に転じるかもしれない。その場合、中国依存度が高い訪日ビジネスは「外交カード」にされかねない。

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 事実、台湾と中国の観光ビジネスでは、15年の約418万4100人まで順調に拡大していた訪台中国人旅行者の流れが、台湾の政権交代で一変。中国政府に対して厳しい姿勢をとる民主進歩党(民進党)の蔡英文氏が台湾総統に就任した16年の訪台中国人旅行者数は前年比16.1%減、17年は22.2%減と急減した。

 その影響もあり地域経済が落ち込んだ結果、昨年の台湾統一地方選挙では民進党が大敗。中国に融和的な中国国民党候補が市長の座を奪った高雄市では今、中国人旅行者の増加が見込まれているという。台湾のケースをみれば、経済合理性とは異なる政治的な理由で人の流れまで変わる中国リスクも浮き彫りになる。

 日韓関係悪化も懸念材料

 この点でいえば、今年以降の訪日ビジネスには韓国リスクも不安材料だ。

 日韓関係は、いわゆる徴用工として労働を強制されたと主張する韓国人男性らの訴訟問題や、韓国海軍の駆逐艦によるレーダー照射の問題などで急速に悪化している。中国のようには、政治問題が民間の人の流れをせき止めるとは思わないが、悪影響の懸念は残る。

 韓国は訪日外国人数と訪日消費額で、ともに中国に次ぐ2位の比率を占める。また、地理的な近さから九州では中国を上回る。外国人延べ宿泊数の国籍・出身地別実績による韓国比率は大分県で62%、佐賀県54%、福岡県50%と高い。宿泊数には商用なども含まれるが、徴用工訴訟の問題は日韓の経済交流を冷え込ませる可能性もある。

 20年の東京五輪、25年の大阪万博を控え、順調にみえる訪日ビジネスだが、中韓が客数・消費額とも、合わせて約5割を占める構図には危うさが残る。(池田昇)

このニュースのフォト

  • 中国の習近平国家主席=1月2日、北京(AP)
  • 外国人観光客らでにぎわう浅草の仲見世=平成30年10月16日、東京都台東区(飯田英男撮影)
  • 「爆買い」の中国人観光客でごった返す静岡空港ターミナルビル(田中万紀撮影)

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