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【終活の経済学】「おひとりさま」の安心終活術(5)委任契約を結ぶ

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 ■元気なうちに事務の代行依頼

 寝たきりになったり重度の認知症になったりしたとき、そして死を迎えたとき、さまざまな手続きなどを代行してもらえるよう、あらかじめ外部の信頼できる組織と委任契約を結んでおく、という手段がある。自身の今後のこと全般と向き合うことになるため、究極の終活といえるかもしれない。

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 ライフエンドに関わる委任契約は主に次のようなものがある。高齢になると認知症や骨折などのリスクが高まる。生前と死後の事務をトータルサポートしてくれる団体もあるので、とくに身寄りがいない、もしくは簡単には頼れないという場合は、普段の生活ができるうちに契約を結んで「安心」を得ておく必要があるだろう。

 ◇見守り(活動)契約

 定期的な面会や電話連絡などで一定の関係を保ちながら、受任者本人の状態を見守ってもらうという契約。身体リスクや認知症リスクに備えて結ぶことが多い。

 いずれの状態になっても早期発見につながり、最善の手が打てるメリットがある。

 ◇任意代理契約

 大きなケガや病気などで、一時的ないし長期的に寝たきりに近い状態になったときなど、自分の代理として生活面で必要な手続きや財産管理を行ってもらう契約。判断力は十分あるが、身体が思うように動かせないというような場合にとくに有効といわれる。

 ◇任意後見(成年後見)契約

 重度の認知症などで判断能力が不十分になった際に、財産管理やさまざまな契約などの事務を代行してもらう契約。これまでの契約とは異なり、公正証書を作成したうえで取り交わす契約となる。

 ◇死後事務委任契約

 契約者が亡くなったあと、さまざまな届け出や葬儀と埋葬の手続き、遺品整理、遺言執行などの実務を依頼する契約。一言で「死後事務」といっても、さまざまな事柄があるので、実際にどこまで依頼できるかについて、契約前に具体的に確認しておく必要がある。

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 ■人生の3ステージをトータルサポート

 ◆生前契約の老舗

 生前契約の老舗「りすシステム」(東京都千代田区)は、1993年の死後事務委任契約に始まり、NPO法人化した現在は生前サポートを加えたトータルサポート体制をとっている。

 人生を3つのステージに分けて、元気に暮らしているときは、生活の支援や入院時の身元保証など、認知症になったら任意後見、そして亡くなったら葬儀や納骨はもちろん、過払い精算や同窓会への通知まで代行する。「りす」(LiSS)は、「リビング・サポート・サービス」の略だそうだ。

 契約数は現在約3400人に上るが、大半がトータルサポートの契約だ。生前サポートのみの契約は受け付けておらず、死後事務サポートのみの契約は2%程度だという。

 代表理事の杉山歩さんは「私たちのサポートは基本的に人生丸ごと。それぞれのステージごとに、契約者がしてほしいことをきちんとお聞きして、公正証書で契約を締結しています」と話す。

 急な入院や手術が必要になったときに即応できるよう、24時間態勢のコールセンターも設けている。「元気なときには、私たちの存在は意識されなくてもいいんです。でも、いざというときは契約者のそばにいて、家族と同じ思いでサポートをしていきたい」

 契約が正しく実行されたかどうかは、第三者機関がチェックするので安心だ。

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 ■柔軟な信託の活用が特色

 ◆一般社団法人

 家財整理に介護問題、贈与や遺言の相談などの生前サポートと、葬儀やお墓、相続と遺品整理といった死後サポートをトータルで請け負う一般社団法人「つむぐ」(大阪市福島区)は、かかった経費をその都度支払うのではなく、事前に提携している信託会社に資金を預託し、そこから支払う「終活信託」が特徴だ。

 代表理事の長井俊行さんは12年間にわたり2000件以上の相続をサポートした実績を持つ。相続時にもめる遺族を見て、生前の準備の大切さが身にしみたという。

 設立以来、相談の約8割を占めるのが遺言書の作成依頼だ。「話をしているうちに任意後見などの相談が加わることもままあります」。長井さんの目標は、相談を通じて関係性を構築し、地域のコミュニティーをつくることだという。「たとえばお寺に『つむぐ』の相談所を作り、ふらりと立ち寄ってもらえたら」。その第一歩として9月に大阪市の浄土宗應典院で「おてら終活カフェ」を開催した。

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 ■個別訪問にも取り組む練馬区

 健康に不安が生じたとき、介護を含めて今後のことについて広く相談できる窓口がほしい。そんな高齢者の声を受けて設立されたのが「地域包括支援センター」だ。全国各地に拠点があり、いずれの施設でも社会福祉士と保健師、主任ケアマネジャーが在籍しているので、医療や介護、生活支援に関する相談などができる。

 東京都練馬区に暮らす全区民約73万人のうち、高齢者は15万8000人。ほぼ4人に1人が高齢者だ。そのうち1人暮らしの高齢者は約5万人にも上る。同区では18年4月から、高齢者の生活実態を把握するため、地域包括支援センターを通して、1人暮らしの高齢者宅への個別訪問を始めた。

 同区高齢施策担当部高齢者支援課の今井薫課長は、個別訪問を通じて介護予防へとつなげる狙いがあると語る。

 「1人暮らし高齢者の方は介護が必要な状態になりやすいという統計もあり、何か困ったことがあっても1人で抱え込んで、孤立してしまう傾向があります。そういったお困りの状況を早期に発見して、適切な支援につなげていくというのが事業の目的の一つです」

 今井課長自身も、高齢者との対話の場に積極的に訪れている。現場を通して、最近は新たな事業の可能性も感じているそうだ。

 「いざ訪問をしてみると、思った以上に元気な方が多いというのが実感です。また個別訪問に参加するボランティアの方の平均年齢は70歳前後ですが、自分よりも年上の方が元気にされているのを見ると、頑張ろうという気持ちになれるとおっしゃいます。訪問を受けた方からもボランティアをやってみたいという声をよくいただくので、社会参加につながるよう支援を行いたいと考えています」

 また同区では、地域団体と協力して、区内17カ所で「街かどケアカフェ」を展開している。高齢者らに気軽に立ち寄ってもらい、お茶を飲みながら地域の交流を深めてもらうとともに、専門スタッフによる健康相談や薬の講座、介護予防体操などの事業も展開している。

 相談業務以外のサービスは各センターそれぞれ。身近なセンターに立ち寄って、支援サービスを知っておくとよいだろう。(『終活読本ソナエ』2018年秋号から、随時掲載)

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  • 杉山歩さん
  • 長井俊行さん
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