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五輪競技の「野球」、ロスに始まりロスに…意外な「難敵」も

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 「若者」というキーワードも野球には微妙だ。フランス国内で人気がある空手が追加種目から落選したのは「若者へのアピールが足りない」という理由が大きかった。さて野球は、というと、17年秋のワシントン・ポスト紙の米国民に対する調査によると、「観戦する最も好きなスポーツ」ランキングでは18-29歳の8%が支持するだけで、競技としては4位。本場の割には高いとはいえない。

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 さらに五輪運営を左右するテレビマネーの点でも、野球は意外と弱い。現在、野球の国際大会として随一の存在といえるのはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)だが、直近の第4回大会(17年)ではロサンゼルスでの決勝戦で米国がプエルトリコを破って初優勝したにもかかわらず、同時期にある全米大学体育協会(NCAA)男子バスケットボール選手権の陰に隠れ、主要局では放送すらなかった。メジャーリーグでも全般に視聴率は低下傾向にあるが、野球の国際大会はそれ以上にテレビでは見られていない状況だ。

 最大の敵

 実は、五輪再復活を狙う野球の最大のライバルになりそうなのは、アメリカンフットボールである。

 米国内で絶大な人気を誇るアメフットだが、その人気も高止まりの飽和状態に近いとされ、NFL(米プロフットボールリーグ)はロンドンやメキシコで公式戦を開催するなど国外にファン獲得の目を向けている。オリンピック競技に加えられれば海外ファンが開拓され、より効果的に世界的な人気を高めることにもつながる。

 14年、国際アメリカンフットボール連盟(IFAF)は、五輪正式種目を狙う競技団体で組織されるIOC承認国際競技団体連合への加盟が認められた。翌15年には五輪の追加種目入りを目指して活動を開始。東京大会の追加種目にも名乗りをあげ、ロサンゼルス大会では組織委員会が提案することが確実といわれている。

 そうなると、選手数制限の問題で野球が同時に提案されるのは難しい。「国民的娯楽」とはいえ、野球存続への対応は二の次になる可能性がある。

 先の米紙の「観戦する最も好きなスポーツ」調査でも、アメフットは34%と野球の4倍強の支持を集めた。米国内でのテレビ中継の視聴率の高さも折り紙付きだ。

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  • 野球が公開競技となった1984年のロサンゼルス五輪で優勝した日本。表彰式で喜ぶ宮本和知投手(右から2人目)、広沢克美(左から3人目)選手ら

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