ゆうゆうLife
家族がいてもいなくても(599)美しきシルバーの夜
それが、ずいぶんと想定外な路線に迷い込んでしまっている、と内心おかしくなった。
そして、追い打ちをかけるように、その夜の帰り路。タクシーの中で、ほろ酔いの隣人が、窓から空を眺めて声をあげた。「あら、お月様がずっとついてくるわよ」と。
その少女のような弾んだ声に、かっこよく老いるよりも、みんなで無邪気さを取り戻していく、そんな想定外な路線もまた、悪くない、わたし向きかも、などと思った夜だった。(ノンフィクション作家・久田恵)