ローカリゼーションマップ

自分も気づかぬ「欲しいもの」 デジタル化で失われる買い物経験

安西洋之
安西洋之

 ぼくはこの店のエピソードを思い出しながら、このショッピング経験は今や無効なのだろうか…と思うのだ。

 確かに店員と話す気分ではない時、声をかけられると商品選択のタイミングを逸することがある。自分のなかで欲しいもののイメージがはっきりした時に、その不足分を補うためにスタッフに相談というパターンがある。

 他方、自分の欲しいイメージをはっきりさせるために、スタッフと雑談しながらいろいろな商品を眺めて、「そう、そう、これが欲しかったんだ!」と気がつくこともある。

 だから、この客の気分を読むことができるのが良い店員であり、また、客が「いや、もう少し1人で考えたい」と答えたら、そのまま離れてくれる。それが客の望む店員像だ。

 だが、そうは言うものの、スマートに振る舞える店員が少ないのも現実だ。だから結果として、店員とのコミュニケーションは邪魔でデジタル化でトラブルを排除していこうとする。

 さて、デジタル化とはトラブル解決のための玉手箱なのだろうか? あまりに「今さら感」がある問いに気がひけるのだが…。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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