別の見方をすると、その役目を学生講師や30歳そこそこの男性講師が負えるだろうか? 答えは自ずと明らかだろう。塾選びの意外な盲点かもしれない。できることであれば、塾関係者以外に相談できる人、いわばセカンドオピニオンをあらかじめ見つけておき、悩みや迷い、不安を早めに解消できるようにしたいところだ。
やる気にさせてなんぼ それが難しい
実際に経験した例を挙げよう。生徒は中3男子、夏期講習直前にシングルマザーである母親と1対1で面談したところ、先に記したような悩みを吐露された。どうやら遅めの反抗期らしく、母親の言うことにまったく耳を貸さないばかりか、しつこく言うと諍いになるという。その生徒の塾での態度はというと、遅刻が多い、居眠りが多い、問題を解く時に真剣味がない、宿題もまずやってこない、ほかの態度の悪い生徒に巻き込まれやすい、という問題だらけの生徒である(ただし、格段に成績が悪いわけではない)。
で、どうなったか。面談当日は、「数日お時間をください。本人ときちんと話をして、その後ご報告します」と約束してお帰り頂いた。とは言え、その時点で具体的な術が浮かんでいたわけではない。さて、どうしたものか…。下手な対応をして、母親に矛先が向いてしまうことは避けなければならない。
数日経っての授業後、その生徒を別室に呼んでこう伝えた。「…お母さんを、これ以上、悲しませるな」「お母さんは、お前がどの高校に行けるかを心配しているんじゃない」「○○が、頑張れる子であってほしい、と願っているんだぞ」と。
この言葉が効いたのか、ほかにも何かあったのかは分からないが、以来、それまで筆者を含む講師の面々とは距離を置いていたその生徒が、ちょくちょく学校の副教材を持て質問にくるようになった。質問にくるということは、少なくとも前もって問題を解いてみているということであり、夏も半ばを過ぎ遅きに失した感はあるものの、格段の進展である。質問のしかたは、と言えば、「せんせい、これわかんない」「せんせぇー、これおしえてぇー」と、言葉遣いはなっていないのであるが。
相手は子どもでも、いや子どもだからこそか、言葉の力、本気の言葉の大切さを改めて痛感した次第。
【受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら