受験指導の現場から

小学生のうちに志望大学を決めろ? 入試改革は親に何を求めているか

吉田克己
吉田克己

 「確かな学力」について答申は次のように定義している。

  • (1)主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)
  • (2)知識・技能を活用して、自ら課題を発見しその課題に向けて探求し成果などを表現するために必要な、思考力・判断力・表現力等の能力
  • (3)その基礎となる知識・技能

 「確かな学力」を構成する3要素のうち、最も大きなパラダイムシフトを要求される要素が(2)であることに異論はないだろう。実際、筆者も、最近リタイアされたばかりの中学・高校時代の先生から、「文科省からは、『教えるな(考えさせろ)』と“指導”されている」と聞いている。

 塾選びにも先見性が求められる

 志望校や塾を選ぶ際の考え方も、変わらざるを得ないのではないだろうか。とは言え、小学生のうちに入りたい大学(学部・学科)を決めるのは難しいだろうし(目標としてはあったほうがよいが)ナンセンスかもしれない。そもそも、7~8年後にその大学が射程に入っているかどうかなぞ、分かろうはずもない。

 となると…、志望校を検討する親としては、上記の(1)(2)も修得できる学校なのかどうかが判断基準の一つになってくるはずだ。学校側も(1)(2)のポテンシャルが高い受験生により多く合格してもらおうと、入試問題に工夫を凝らしてくるのは必然的な流れだろう。

 たいがいの場合、通わせる塾が先で、志望校は後から決めることになるのだが、この点にも発想の転換が必要かもしれない。なぜなら(私見ながら)、第一志望校の新・入試問題傾向に、いま通わせている塾が対応できていなかったというアンマッチが今後増えてくると考えられるからである。

 加えて、第一志望校がまだ決まっていない状態で塾に通わせているのであれば、第一志望校が決まった時点で、ここ数年の入試問題傾向の変化とその方向性を確認し、通わせている塾を吟味したほうがよいこともあるだろう。

 別の捉え方をすると、受験後の長い人生を考えれば、知識・解法を詰め込む指導スタイルの塾や算数・理科・社会の記述問題対策が不十分な塾、課題量が多すぎるが故に与えられたことしかやらない指示待ち型に育ってしまいそうな塾など、子どもの性格や資質によっては、通塾先を考え直したほうがよいかもしれないということだ。

京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「ダイヤモンド・オンライン」でも記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら

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