コンパクトシティ推進のエンジンに
この実証実験はITを活用して、市民や観光客が利用する公共交通機関の利便性・回遊性を向上させることを目指している。
「車で目的地に行って用が終わったらすぐに家に帰るのではなく、もっと路面電車やバスなどの公共交通機関を使って街に出歩いてもらいたい。街に出ていろいろなところに立ち寄って消費をしてもらう。そうすることで、市街地は賑わいを取り戻し、元気になります。このアプリが街を回遊するきっかけになることを期待しています」
こう語るは、この実証実験に参画する富山市民プラザの本社事業部資産管理活用グループ/総務・経理グループの中屋州策チーフだ。富山市民プラザは官民が連携して市街地の活性化事業に取り組むために設立された会社で、公共交通を軸にしたコンパクトな街づくりによって中心市街地の活性化を目指した「コンパクトシティ戦略」の推進にこのアプリを役立てる考えだ。
アプリをみれば、公共交通機関を使った目的地への行き方が案内されるので、公共交通機関が利用しやすくなる。また、お得で便利なプッシュ通知の案内を見て、「ちょっと寄り道」を促す。市街地のいろいろな施設に立ち寄ってもらえば、街はにぎわう。店や施設で消費をしてもらえば経済も活性化する。コンパクトシティが目指す公共交通機関の利用促進と、市街地活性化の2つの課題を解決することができる。
さらに富山市は、日常生活の中での「歩くライフスタイル」を推進し、将来市民が健康で幸福に暮らす活力ある都市の創造に取り組んでいる。このアプリを活用することによる「歩くライフスタイル」が定着すれば、市が掲げる「健康都市」実現にもつながる。
アプリ利用のカギを握るのは…
街づくりに詳しい富山大学人文学部の大西宏治教授は「例えば、富山大学の学生は70~80%は県外から入学する。県外からの転勤者も多く、あまり富山市の情報を知らない市民も多い。情報の発信の仕方によっては、店にとっては新たな顧客獲得のチャンスになる」とアプリのメリットを強調する。
実証実験に参加したモニターに話を聞くと、「便利に活用した」という声がある半面、「知っている情報ばかりだった」との声もあった。実証実験であるため、協力してくれた店舗が少なかったことも背景にある。アプリ普及のカギは、市民が「便利だ」と思う情報をいかに提供できるかがポイントになる。
実証実験に協力した桝田酒造店の桝田隆一郎社長は「中国や東南アジアをみると、どんどん新しいチャレンジをしている。日本ではネガティブな反応が出て、うまくいかないことが多いが、失敗を恐れず新しいチャレンジをすることが必要だ」と語り、新しいものを積極的に取り入れる地元の店舗や施設の意識改革の必要性を指摘した。