教育・子育て

休校延長、子供のストレス懸念の声も 夏休み大幅短縮でカバー

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校長期化で、各自治体に夏休みを大幅に短縮する動きが出ている。学習指導要領の定める授業内容をカバーするためで、中にはお盆期間を除いて夏休みをほぼゼロにする自治体も。文部科学省は現場の弾力的な授業運営を求めているが、専門家らからは子供の負担を懸念する声や、国の明確なかじ取りを求める声があがる。(藤井沙織)

 「早く決めた方が学校も授業計画を立てやすく、子供や保護者も見通しを持てる」。兵庫県明石市教委は4月28日、休校を5月末まで延長し、夏休みは8月8日~16日に短縮すると発表した。同県小野市も1日、同様の対応を取ることを決定。同県加古川市教委は5月末まで休校を延長したうえで、夏休みを8月1日~16日にする。

 文科省は臨時休校の実施に伴い、1日の授業時数を増やす▽土曜授業の実施▽夏休みなどの長期休暇の短縮▽学校行事の削減-によって学習機会を保障するための措置を講じるよう各教育委員会に要請。長期休暇の期間は学校教育法施行令に基づき各自治体が決めるため、理論上は夏休みをゼロにすることも可能だ。

 大阪府教育庁は従来、夏休みを7月21日~8月31日とし、長期休暇中の授業実施は原則7日以内と定めるが、「上限の変更や夏休み自体を短くすることも考えている」と担当者。5月末まで休校する神戸市教委の担当者も「授業時数を増やすなど他の対応をとったとしても、夏休みはある程度短縮せざるを得ない」と話す。

 夏休み活用の課題の一つは、猛暑の中で授業を行うこと。文科省の調査では、全国の公立学校の普通教室における冷房設備の設置率は昨年度末で9割に達した見込みで、同省は「エアコンがあれば夏休みも活用しやすい。休校期間や気候など、それぞれの地域の実態に合わせて工夫を」と求める。

 だが、学習機会の確保の一方で、懸念されるのが子供への負担だ。大阪府内の公立小学校の校長は「感染リスクを下げるためには窓を開ける必要がある。真夏にエアコンがどこまで効くか」ともらす。フリースクールを運営するNPO法人「ふぉーらいふ」(神戸市)の中林和子理事長も「子供たちは今、休校を楽しんでいるのではなく、大きな不安やストレスを抱えている」と指摘。通常の長期休暇の後でも精神的に不安定になる子供は多く、「遅れを取り戻そうと、行事も休みもなく授業を詰め込めば、さらなるストレスで学校に通えなくなる子供も出てくる。子供たちのペースにも寄り添ってほしい」と訴える。

 文科省も、学校再開にあたってのガイドラインに「負担が過重にならないよう配慮は必要」と明記。一定の要件のもとで家庭学習の成果が確認できれば授業の代わりにできるという特例措置も出したが、学校現場からは「実用はかなり難しい」との声が上がる。すでに複数の自治体が5月末までの休校延長を決めたほか、再開後も感染リスクを下げるための分散登校が予想されるため、夏休みの大幅短縮などの対応はまぬかれない状態だ。

 名古屋大大学院の内田良准教授(教育社会学)は「文科省の求める現場の『弾力的な対応』では収められないところまできている」と指摘。「オンライン授業を明確に授業とみなす、年度始まりを9月にするなど、学校教育の土台に踏み込んだ議論が必要。国は早期に方針を示すべきだ」と主張している。

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