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腸チフスを50人に感染させてしまった普通の人も 感染症の本で教訓を学ぶ

 メリハリつけた行動を

 中央公論新社は、2006年初版で3刷り2万部を数えるロングセラーの『感染症 広がり方と防ぎ方』(井上栄著・中公新書)に、新型コロナの新章を加えた増補版を4月下旬に刊行。すでに増刷し、1万7000部の発行となった。

 著者は国立感染症研究所感染症情報センター初代センター長。03年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)で日本人患者がゼロだったことに触発され、感染症の伝播とその遮断について考察、感染症の脅威に正しく対処するための基礎知識をまとめた。増補版は、旧版の内容をほぼそのまま残しながら、新型コロナの伝播遮断の行動について取り上げ、ウイルスが広がりにくい社会について検証している。

 日本での感染拡大が心配されるとはいえ、著者は「日本人の生活文化には病原体がうつりにくい条件が組み込まれている」と指摘。ウイルス伝播を防ぐために「日本人の清潔行動文化を国民が意識し、かつそれを効率的に活用すること」の重要性を説く。また、メリハリをつけた行動が大事とし、人混みを抜けたらマスクを外すことを勧める。顔に日光を当てれば体の免疫力が高まるという研究があるためだ。

 中公新書の担当者は「新型コロナといっても問題の本質はSARSのころと変わっていない。本書で感染症の基本を知っておくことが、自分や大切な人を守るのに役立つので、多くの人に読んでほしい」と話している。(平沢裕子)

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