イタリアン+アメリカンの「パーティーブランディング」
ここでトップブランドの「ピザーラ」のブランディングをあらためて見てみますと、そんな非日常感を盛り上げる演出で一貫しています。何せピザはご存知の通り、イタリアン料理。今ではずいぶん身近になりましたが、やはり日本のモノではない特別感はまだまだ、そこはかとなく香ります。
大きくデザインされたおなじみ「PIZZA-LA」という赤文字Pのマークとともに英文字のみで構成されたロゴが洋物らしさを伝えます。よく見ると、ロゴの一部にJAPAN STANDARDとあります。日本の定番というような意味あいでしょうか。ホームページを見ると、商品開発コンセプトは、「毎日、日本人がたべても飽きないピザをつくる」とありますので、そんな気持ちを言葉に表したのかもしれませんが、あえての英語。
メニューを見ても、「プライムクォーター」とか、「バスターズクォーター」、「モントレー」など、英語をそのままカタカナにしたようなメニューが並びます。ピザのシズルカット(美味しさを伝えるイメージ写真)の背景が黒だったり発色からして写真もどこか日本離れしたスタイル。そう言えば、モデルさんがいつも外人さんだった印象があります。
そうなんです、このイタリアンとピザデリバリーの本場アメリカンテイストがミックスされたようなハイカラ感が、ピザーラブランドを、どこかちょっとだけ非日常感のあるブランドに仕立てているのです。
だからちょっと誰かの家でホームパーティーというシチュエーションでも、”パーティー”という洋風文化の文脈を壊さずに誰からも異論なく受け入れられてきました。
そしてパーティーブランディングというべきこの少々の非日常感があるからこそ、長い自粛生活のマンネリ感打破に今引っ張りだこなのです。デリバリーを待つあのちょっとしたワクワク感や、”ピンポーン”という到着のサインに”ニッコリ”しない家族はいないに違いありません。
意外。生粋の日本ブランド
でも皆さんご存じでしたか、実はピザーラ、生粋の日本ブランドだということを。1号店は1987年、東京目白。なんでも某アメリカ系のピザチェーンのフランチャイズ加盟を断られたことで自分たちのピザ屋さんをオープンさせることを決意した、創業者である日本人夫婦が立ち上げたブランドであるということを。
言われてみれば、ピザの箱には「ピザーラは、1987年に日本で生まれた宅配ピザです。」としっかりアピールされています。
そう考えるとバブル絶頂期に始まりはじけた時代を営々30数年、デリバリーピザを日本全国に定着させてきたタフブランドだと思い当たります。
誰もが長い自粛を余儀なくされながらも、流行収束後のリカバリーに思いを巡らせている今。そんな日本のパーティーブランドのエネルギーは、我々をちょっと元気にしてくれるように感じるのでした。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら