客は止められない? コロナ閉鎖続出の海水浴場…事故や管理懸念
新型コロナウイルスの影響で、全国の海水浴場で開設中止が相次いでいる。屋外とはいえ多くの人が訪れるほか、更衣室などで「3密」(密集、密閉、密接)を避ける対策が取りづらいため感染予防対策が難しいと判断、断念した自治体が少なくない。一方で、海岸自体は自由に出入りできるため、ごみの後始末や水難事故の対応が難しくなるほか、開設する海水浴場へ多くの人が押し寄せる懸念も出ている。
苦渋の開設中止「戦後初の決定」
日本有数のビーチリゾート・湘南を有する神奈川県。昨年は県全体で約320万人が来場したが、今年は、藤沢市や茅ケ崎市、平塚市など県内25カ所の海水浴場のうち24カ所で開設中止が決まった。
「今回の決定は戦後初めて」。由比ガ浜海水浴場がある鎌倉市の松尾崇市長は記者会見で悔しさをにじませた。県は海水浴場の運営について、「海の家は完全予約制」「砂浜に一定間隔の目印設置」とのガイドラインを設定。江の島海水浴場協同組合の担当者は「全ての項目を厳守するのは難しいと判断した」とする。
監視員も救護所も…設置されず
海水浴場を開く場合は、海水浴場条例に基づき、監視員や救護所を設置する義務があるが、開かない場合は設置されなくなる。海岸自体は自由に立ち入りができるため、海に来て遊ぶ人は少なくないとみられる。その場合、水難事故の危険性やごみの問題も浮上する懸念もある。
同組合は、「まだ何も決まっていないが、安全面やごみの問題は、組合として協議し県にも協力をお願いする」と強調した。
「密回避」呼びかけなどで警戒
千葉県では海水浴場のほとんどが開設されないが、サーフィンで訪れる利用者も多い。延期となった東京五輪で初採用となったサーフィン競技の会場となる釣ケ崎海岸(一宮町)では、感染防止対策のため、4月7日から駐車場が閉鎖されていたが、5月末に再開。町サーフィン業組合の鵜沢清永(うざわ・きよひさ)組合長(44)は「感染防止のためにサーファーにも“密”を避けるように呼び掛けていきたい」と警戒を続ける。
伊豆半島など海水浴が重要な観光産業である静岡県では頭を悩ます。
東伊豆町は8月1日に開設する方針で進めていたが再び調整しているとし、南伊豆町は今月中に方針を決めるとしている。伊東市と下田市は開設を決めた。伊東市は7月18日に開設する方向で準備を進め、下田市も市内9カ所の海水浴場を開設する方向で進めている。例年は7月中旬の開設だが、ライフセーバーの主力となる大学生の夏休みが短縮されたことなどから開設時期はずれ込みそうだ。
また、近隣の海水浴場が開設されない中で開設する場合、例年以上に人が押し寄せて、より密集状態が作られる恐れもある。
「水しぶき飛ぶ行為は控えて」
兵庫医科大の竹末(たけすえ)芳生主任教授(感染制御学)は「海水の感染リスクは低いが、更衣室などに余裕がなく、(海開きは)現実的には難しいだろう」と指摘。一方、海水浴を楽しむ際は「海中でも距離を取り、飛び込みなど水しぶきが飛ぶ行為は控えた方がよい」と話している。