キスのあいさつ皆無、マスクはファッション フランス社会に新潮流
マスクでおしゃれ
全国で電車やバスでは、マスク着用が義務となった。今や日用品として広がり、アクセサリー小物として売り出す店も目立つ。
服飾デザイナー、ピエール・タラモンさんは自身のブティックで、シャツやズボンと柄を合わせたマスクのコーディネートを提案する。「手袋や靴も元来は、身体を守る道具だった。マスクも服飾の一部として進化するはず」と期待を寄せる。今春予定していたパリコレの新作発表会が中止になり、マスクのデザインを始めたところ、2カ月で約500枚売れた。1枚約15ユーロ(約1800円)だ。
タラモンさんは「宴会や出張が減り、外出着の需要が減る一方、室内着の質やデザインにこだわる人が増え、客単価は増えた。コロナ禍は消費者を変えた」と話す。
「儀礼的接触から解放」
心理学者のジュリア・ドヒュネスさんに、コロナ危機と社会について聞いた。
--感染予防の「社会的距離」は人間関係を変えるか
「あいさつのキスなど、他人との儀礼的な接触からみんなが解放された。恋人や家族と触れ合う喜びを実感し、『本当に大切な人は誰か』を確認した。表面的な付き合いは減り、大切な人と関係を深めようとするようになった」
「外出禁止令の間、家族だけで家に籠る日が続き、絆を強める夫婦がいる一方、ケンカ続きの家庭もあり、明暗が分かれた。『コロナ離婚』が増えている」
--テレワークの影響は
「社内の『不要な管理職』が明らかになり、仕事の成果を示さねばならなくなった。管理職にはつらい人もいるだろう。仕事の進め方は上意下達から、チームの協業へと変わるのではないか」
「社員の多くは一度得た解放感を手放そうとせず、テレワークは今後も広がるだろう。テレワークできない職種との社会的格差も鮮明になる」
--仏社会の変化は
「危機を共に戦った国民の結束は強まったが、脅威が消えれば元に戻る。ただ、医療や農業など生活を守るために『必要な仕事』への敬意は残る。フランスでは看護師や医師の待遇を改善せよ、という政府に求める世論が強まっている」