ヘルスケア

新型コロナ感染に妊婦不安 精神的な負担も

 新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、多くの妊婦が、感染への不安を感じながらおなかの命を育んでいる。立ち会い出産や入院中の面会ができないケースもあり、精神面への影響も懸念される。専門家は「不安なときは、主治医を信頼して相談してほしい」と話している。

 かからないこと

 妊娠6カ月の奈良県橿原市の女性会社員(32)は先月、通勤で電車を利用した際、新型コロナに感染しないか心配になった。車内が混雑し、マスクを着用しない人が目立つようになってきたからだ。

 「感染したら使える薬はあるのか、胎児への影響はどうなのか…」。女性は表情を曇らせる。

 病院へ行くのをためらう人も。4月下旬に次男を出産した東京都江東区の女性会社員(43)は、臨月に急激に体調が悪化。血圧が160を超え、歩けない程の浮腫が生じ、緊急入院となった。女性は「外出の機会が減り、体調の変化に気付きにくかった。健診日以外に病院へ行くことへの抵抗感もあり、我慢してしまった」と話す。

 日本大医学部の主任教授で「日本産婦人科感染症学会」副理事長の早川智氏は「妊娠中の女性が特に感染しやすいということはなく、今のところ、重症化率も妊娠していない人と変わらない。胎児への母子感染はまれで、先天奇形の報告もない」とする。

 一方で「妊娠後期になると横隔膜が持ち上がって肺が圧迫されるため、新型コロナに限らず、妊娠中に肺炎になると命にかかわることもある。不必要な外出や人混みを避けるなど、とにかくかからないことが大切。また、妊娠による症状に限らず、体調に不安があるときはまず、主治医に相談してほしい」と冷静な対応を呼びかけている。

 オンライン交流

 精神面への影響も懸念される。5月に出産した東京都千代田区の女性会社員(42)は、感染を避けるため、里帰り出産を断念。出産した施設では、立ち会い出産や産後の面会ができなくなり、「1人で心細いという思いもあった」と振り返る。

 こうした精神的な負担を和らげようと、インターネット上で交流の場を設ける取り組みが広まっている。

 出産や育児について学ぶ「両親学級」などの中止が各地で相次いだことから、妊娠・出産や育児に関する情報サイトを運営する「ベビカム」は、オンラインでの両親学級を実施している。

 参加者からは、これまでに「立ち会い出産ができず1人で産むことになり不安」、「面会ができないので入院生活をどのように過ごしたらよいのか」-といったさまざまな相談が寄せられたといい、講師を務める同社アドバイザーで聖母病院看護部長の山本智美さんは「両親学級などが中止になり、妊婦は正しい情報をどうやって得たら良いのかという戸惑いを感じている」と話す。

 妊婦には「立ち会い出産ができず不安な人は、自分で産むという覚悟をもって臨んでほしい。医師、看護師、助産師が付いているので遠慮なく相談してほしい」と助言。パートナーについても「立ち会い出産などができず、父親として焦ってしまうかもしれないが、一緒に生活する中で家族になっていく。今できることは、自分が感染しないよう予防を徹底すること。そして、妊婦の不安な気持ちに寄り添い、話を聞いてあげてほしい」と話している。

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