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梅雨終盤に豪雨招く「湿舌」 湿った空気停滞、気温上昇で雨量増

 広い範囲で激しい雨を降らせ、九州各地に川の氾濫など大きな被害をもたらす原因となっているのが日本列島付近に停滞する「梅雨前線」だ。梅雨の終わりごろになると、暖かく湿った空気が前線付近でぶつかって激しい雨を降らせる例が多い。専門家は「長期的に気温が高い状態が続いていることが雨量が激しい雨につながっているのでは」と分析している。

 気象庁などによると、梅雨の時期は北にある高気圧と、南にある暖かい太平洋高気圧の勢力が拮抗(きっこう)。日本列島付近でぶつかり合い、間に前線が生まれて停滞し、梅雨前線となる。

 梅雨が終わりに近づくと、中国大陸南部から前線に沿って暖かい風が吹き、東シナ海を渡る間に大量の水蒸気を含む。暖かく湿ったこの空気が日本列島まで延びる様子が「舌」に似ていることから「湿舌(しつぜつ)」とも呼ばれている。

 同時に、夏が近づき太平洋高気圧が勢力を増すようになると、高気圧に沿って時計回りに風が吹く。高気圧の西側では南から北に向かって水蒸気を含んだ暖かい風が吹く。

 この2方向からの風が前線付近でぶつかると、上昇気流が生まれて積乱雲が次々と誕生し、激しい雨を長時間降らせる。

 太平洋高気圧の張り出し方によって場所は異なるが、梅雨の終わりごろは前線がかかっている地域でこうした気象条件が発生しやすくなる。気象庁の担当者は「今回激しい雨が降ったこと自体は特異なものではなく、梅雨の時期に起こる気象条件がもたらしたもの」と説明する。

 一方、日本列島では長期的に気温が上昇する傾向が続いているほか、今年は九州北部で6月の平均気温が観測史上最高を更新。南部でも観測史上最高と並ぶ数値となるなど、例年より高温となっていた。

 京都大学防災研究所の竹見哲也准教授(気象学)は「気温が高いと空気中の水蒸気量が増えるため、地域によって経験したことのない大雨につながった可能性がある」と指摘している。

 梅雨が明ければ日本列島は広く太平洋高気圧に覆われ、晴れの日が続くようになるが、平年の梅雨明けは九州南部で14日ごろ、北部では19日ごろだ。しかし、気象庁天気相談所の立原秀一所長は「今後の天気予報を見る限り不安定な天気が続いており、平年と同じ時期に梅雨が明けるかどうか見通せない」と説明。竹見准教授は「梅雨が明けるまで、前線がかかる地域はどこでも同じような雨が降る可能性があるので警戒が必要だ」と話している。

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