オーダーブックで読み解く外為市場

新政権の誕生は金融政策かじ取りにどう影響? 黒田日銀総裁の発言に要注意

OANDA FXラボ編集部
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 先週の為替相場は、引き続き株式市場が軟調な展開となったこともあり、安全資産とされる、米ドル、円が比較的強かったほか、英国と欧州連合(EU)の通商協議が難航していることを受け、ポンドが弱い推移となりました。

 注目された欧州中央銀行(ECB)理事会では、ECBスタッフによる経済見通しが上方修正されたことや、ラガルドECB総裁の会見にて、一部で警戒されていたユーロ高をけん制するコメントが出なかったことを受け、会見後は、ユーロ買いが強まりました。ただし、その後は、米国株式市場が軟調な推移となり、リスク回避の米ドル買いが強まったこともあり、ユーロの上昇は長続きしませんでした。

 今週は日米で金融政策を決定する会合が予定されており、為替市場でも注目が集まります。

 米国の金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)では、声明文内のフォワードガイダンスの変更の有無、同時に公開される経済見通しの内容に注目が集まり、低金利政策長期化に対する思惑が米ドルを動かす要因となりそうです。

 日本の金融政策を決定する日銀金融政策決定会合では、金融政策は現状維持との予想が中心となりますが、その後の黒田東彦日銀総裁の会見においては、新政権誕生による金融政策への影響等の質問も予想され、回答に注目が集まりそうです。市場に衝撃を与える内容が出てくる可能性は低いと考えられますが、注意したいところです。

 ドル円は均衡が上下いずれに崩れるか

 では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。

 オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。

 ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。

 先週のドル円は、1米ドル=106円台前半を中心とした狭い価格レンジ内で方向感の鈍い推移が続きました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、方向感の鈍い推移が続いていることにより、直近の1米ドル=105.80円~106.55円付近のレンジで構築されたポジションが多く、買い圧力、売り圧力が拮抗しているのが確認できます。

 FOMCを控え、様子見ムードが強まる可能性も考えられますが、この価格レンジを上下のいずれかに抜けるような動きとなると、苦しくなった売買のいずれかのポジションの損切り(損失を拡大させないための決済)が増え、抜けた方向に価格が大きく動く可能性が考えられそうです。

 ユーロドルは上昇基調を維持できるか

 先週のユーロドルは、序盤に下値を探る動きとなった後は反発に転じましたが、上値も重く、伸び悩む動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、上昇基調が続いているため、含み損を抱えた売りポジションが依然として多く、下押した水準では安堵の買い戻しが増えそうですが、これに対し、直近では伸び悩む動きが続いているため、含み損を抱えた買いポジションも増えており、下押しが続くとこれらのポジションの損切りの売りが増える可能性にも注意が必要となりそうです。

 ユーロドルは、今のところ、上昇基調が続いてはいますが、上昇の勢いが和らいでいるようにも見えるので、しっかりと踏ん張ることができるかに注目したいところです。

 ポンドドルは下落基調が続くかに注目

 先週のポンドドルは下落基調が続き、一時1ポンド=1.27米ドル台まで下落する動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、下落基調が続いたことにより、含み損を抱えた買いポジションが増えており、反発した水準では安堵の利益確定の売り、下押しした水準では損切りの売りが増えることが想定され、上値の重い状態が続く可能性に注意が必要となりそうです。

〈OANDAのオーダーブック〉

オープンポジションはここに注目

 相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。

 これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。

 例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。

 損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。

 オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。

オープンオーダーはここに注目

 前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。

 オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。

 損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。

世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?

 トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。

 OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。

 これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。

※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。

本記事に掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。

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第一種 金融商品取引業 関東財務局長 (金商) 第2137号

加入協会等:一般社団法人 金融先物取引業協会 証券業協会 日本投資者保護基金

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OANDA FXラボ編集部 OANDA Japan株式会社
世界各国に拠点を持つFXブローカー
1995年に世界で初めてインターネットを利用した無料の外国為替レート情報の提供を開始したOANDAの日本法人。創業当初から、正確で透明性の高い優れた為替レートを提供するため万全のインフラを整え、取引環境の改善を行ってきた。現在では世界8カ国にオフィスを構え、そのサービスは世界中のトレーダーに利用されている。

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