コロナ禍で苦境の地方映画館 「町のスクリーンを守る」奮闘を追う
シリーズ3部作に登場するのは、「大黒座」や「大心劇場」など親の跡を継いで経営する老舗の映画館だけではない。広島県尾道市にある「シネマ尾道」は、同市出身の女性、河本清順さんが、映画好きが高じて創設にこぎつけた映画館だ。
日本映画界の巨匠、小津安二郎監督の「東京物語」や、今年4月に亡くなった大林信彦監督の「転校生」など同市を舞台に撮影された名作は多い。尾道は「映画の街」とも呼ばれてきたが、この数十年の間に市内にあった約10館の映画館は次々と閉鎖に追い込まれていき、2001年には、ついに最後の1館が幕を閉じてしまう。
NPO、ボランティア…継続のための方策
「尾道の映画館の火を消したくない…」。京都の専門学校を卒業後、尾道に帰っていた河本さんは、映画館創設のために動き出す。「尾道に映画館をつくる会」を立ち上げ、06年にはNPO「シネマ尾道」を発足。「尾道シネマ基金」を作り、地元の企業や個人などから出資金を募り、08年、市内唯一の映画館として「シネマ尾道」をオープンさせたのだ。
高価な映写機などを揃える資金はなかった。だが、河本さんの映画館創設への思いに共鳴する岡山市の単館系映画館が、使用していた映写機を格安で譲ってくれた。また、映画館のスタッフには、地元大学の映画研究会の大学生たちにボランティアとして手伝ってもらうなど、資金をかけずに映画館を運営していく方法を模索してきた。
「ボランティアの大学生は無給ですが、その代わりに、ここで上映される映画をすべて無料で見ることができるなど、映画好きの人たちの情熱で運営されているのが特徴」と森田監督。「映写機を譲ってくれた岡山の映画館『シネマ・クレール』の浜田高夫さんも、“映画館を1人で作った男”と呼べるような映画への情熱を持った館主なんですよ」と話す。
コロナ禍で、地方の映画館の経営状況は今後もさらに苦しめられそうな状況だが、森田監督はこう訴える。
「約10年間、撮影してきた約20館の映画館の中で、閉鎖されたのは実は数館だけ。情熱さえあれば、地元で協力してくれる映画好きの仲間はきっといるし、知恵やアイデアさえあれば存続できることを伝えたい。決して儲けを期待してはいけませんが…」
採算度外視で、大好きな映画のために、アイデアや知恵を振り絞りながら、経営難に立ち向かう地方の映画館主たちの姿は、コロナ禍で苦境にある人々に勇気を与えそうだ。