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(186)前後不覚になるまでの飲酒は×

 適度なお酒は潤滑油のような役割も果たしてくれますし、文化の発展にも寄与してきたことでしょう。しかし、多くの人に問題をもたらしていることも事実です。長期にわたってたくさん飲んでしまうと肝臓をはじめとした臓器に問題を起こすことにつながります。

 高血圧で通院する50代後半の男性患者さんは酒席が大好きで、飲みに出かけると楽しくなってしまい、どのくらい飲んだか分からないほど飲んでしまうこともあるそうです。帰り道に意識をなくしたこともあったといいます。

 長期間大量に飲酒を続けると脳が萎縮することが分かっていますが、認知症を増やすかどうかについては、明確な答えは今のところ出ていません。しかしやはり危険なようです。

 飲酒に伴う一過性の意識消失と認知症の関係を調べた研究結果が今年9月、米国の医学雑誌に発表されました。欧州の国々で行われた7つの研究をまとめたもので、13万人の飲酒者を対象に、登録時より過去1年以内の飲酒に伴う意識消失の有無と、その後の認知症発症の頻度を調べたものです。結果は、10年の経過で意識消失のない人に比べてあった人では、男性で2・9倍、女性で2・1倍認知症の発症が多くなっていました。認知症のタイプとしては若年型でも高齢発症でも同様で、またアルツハイマー型(約2倍)より、脳血管型(約4倍)の認知症が増えていました。平均的な酒量が多いこと自体は、さほど大きな影響は及ぼしていませんでした。

 飲酒時の意識消失は、通常は一時的に多量に飲酒したときに起こります。高濃度となったアルコールやその代謝物が、脳神経や微小血管を痛めつけることで脳細胞や構造を壊し、後々認知症を引き起こす可能性などが考えられます。

 普段あまり飲まなくても時々痛飲してしまうという人は、健康を害したり寿命が短くなったりする可能性も指摘されています。この男性患者さんも、最近は新型コロナウイルス感染症流行の影響で、以前のようなことはなくなっているそうですが、過量の飲酒には注意するようお話ししています。

(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)

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