「まず、どこに住みたいかが重要です。希望のエリアが決まったら、何度か訪問して試しに滞在してみてください。住民の様子、自治体のルールが分かってきます。また、既に移住している方にも話を聞いて参考にしてください。物件の状態は千差万別ですが、何でも揃っている完璧な物件は、やはり相応に高額です。多少の不便がある物件は価格も安くなっていますので、そういう物件を選んでDIYを楽しみながら、好きなようにリフォームしていくことをおすすめします。リフォーム時に一番大事なのは、水回りや電気系統です。水道管や、排水管、そして電気の配線などをしっかりチェックしてください」
地元に詳しいシニアを調査員に
同社では、2018年から「AKIDAS(アキダス)」という独自のシステムを運営している。これは全国の空き家と想定される物件を、専門の調査員が調べてデータベース化したものである。それを有償で不動産業者に提供している。
「地方の空き家を有効活用したいけれど、現地を調査したり、法務局へ行くのが負担という事業者のために運営しています。リタイヤした地元に詳しいシニアを調査員として雇用しており、現在50名が在籍しています。空き家は時間とともに状態が変化しますので、3カ月に1度のペースで確認しています。これまでは都市部の空き家見込み物件を中心にデータを収集していましたが、最近では地方自治体からの相談も増えており、地方の空き家調査も受けている状況です」
また、空き家のDX(デジタルトランスフォーメーション)化も進めている。人工衛星が撮影する熱赤外画像などのデータを、AIを活用して分析し、空き家の多いエリアを検出するプロジェクトである。この事業は東京都が財政支援を行う「民間空き家対策東京モデル支援事業」に採択されている。
「空き家特措法が制定されて以来、全国の自治体では空き家の実態調査を行っています。しかし、職員が1軒ずつ訪問して調べる場合が多く、大変な負担を強いられています。AIを活用すればコストを抑えることができ、空き家の情報を迅速に提供できるようになると考えました。コロナ禍により地方へ引っ越す人が増え、空き家の注目度も高まってきた今、調査のデジタル化は、新しい市場の創出につながると確信しています」
新型コロナウイルスの騒動で注目を浴びている空き家。歴史を育んできた貴重な建物を壊さずに再活用すれば、次の世代への財産になるかもしれない。地方移住や多拠点居住を考えている方は、空き家を選択肢に入れてみてはいかがだろうか。(吉田由紀子/5時から作家塾(R))