オーダーブックで読み解く外為市場

引き続き米国の追加経済対策、英国とEUの通商協議等の報道等に注意

OANDA FXラボ編集部
OANDA FXラボ編集部

 先週の外国為替市場は、米国の追加経済対策が依然として不透明な状況が続いていたこともあり、米ドルが弱い推移となりました。一方で英国とEUの通商協議に関してポジティブな報道が出てきたことなどから、ポンドやユーロは比較的強い推移となりました。

 今週も引き続き、米国の追加の経済対策に関する報道や英国とEUの通商協議の行方といった不確実なイベントに関する報道に振り回される可能性に注意したいです。

 また、欧州を中心に新型コロナウィルスの感染拡大に歯止めがかからない状況が続き、一部で外出禁止令等の規制が強化されており、経済活動に対する影響が懸念されています。

 外国為替市場でも欧州通貨の上値圧迫材料となることが予想されるほか、株式市場が下落するような展開となると、リスク回避色の強い相場となる可能性が考えられるため、最新の報道、市場の反応に警戒したいです。

このほか、今週は欧州中央銀行(ECB)の金融政策を決定するECB理事会、本邦の金融政策を決定する日銀の金融政策決定会合が予定されています。

 いずれも金融政策の変更の可能性は低いと予想されており、市場への影響は限定的と考えられますが、両中央銀行の総裁の会見等で今後の金融政策の手がかりが出てくるようであれば、過敏に市場が反応する可能性もあるため、注意したいです。

ドル円はサポート水準を守れるかに注目

 では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。

 オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。

 ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。

 先週のドル円は上値の重い推移となり、1米ドル=104.35円付近まで下押しする動きとなりました。

OANDAのオープンポジションを見ると、買いポジションの比率が66.2%と高い中、多くの買いポジションが下押しにより、含み損を抱えています。

 このため、反発に転じた場合は安堵の利益確定の売りが増え、上値を圧迫、また、安値を切り下げる動きとなった場合は、損切り(損失拡大を防ぐための決済取引)の売りが増え、上値の重い状態が続く可能性を見出すことができそうです。

ユーロドルは上昇余地あり

 先週のユーロドルは、底堅い推移が続き、1米ドル=1.19ユーロに迫る動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、売りポジションの比率が63.2%まで上昇する中、その多くが含み損を抱えた状態であり、高値を切り上げる動きとなった場合は損切りの買い、安値を探る動きとなった場面では安堵の買い戻しにより、底堅い推移が続く可能性が考えられそうです。

ポンドドルは売買の力が均衡

 先週のポンドドルは水曜日に大きく上昇したものの、その後は伸び悩む動きが続いています。

 OANDAのオープンポジションを見ると、売買の偏りが少ない中、上昇により含み損を抱えた売りポジションが増えてはいるものの、後半の下押しにより、含み損を抱えた買いポジションも増えており、売買のバランスは均衡しているように見えます。

 ポンドドルは、今のところ緩やかな上昇基調が続き、この流れが続くかに注目したいところです。ただし、英国とEUの通商協議という不確実なイベントを控えており、最新の報道により、不安定な推移となる可能性があるため、注意したいです。

【OANDAのオーダーブック】

オープンポジションはここに注目!

 相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。

これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。

 例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。

 損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。

 オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。

オープンオーダーはここに注目!

 前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。

 オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。

 損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。

世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?

 トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。

 OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。

 これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。

※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。

本記事に掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。

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第一種 金融商品取引業 関東財務局長 (金商) 第2137号

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OANDA FXラボ編集部 OANDA Japan株式会社
世界各国に拠点を持つFXブローカー
1995年に世界で初めてインターネットを利用した無料の外国為替レート情報の提供を開始したOANDAの日本法人。創業当初から、正確で透明性の高い優れた為替レートを提供するため万全のインフラを整え、取引環境の改善を行ってきた。現在では世界8カ国にオフィスを構え、そのサービスは世界中のトレーダーに利用されている。

【オーダーブックで読み解く外為市場】はOANDA FXラボ編集部が投資判断の参考として外国為替市場の動向を読み解く連載コラムです。更新は原則毎週火曜日。アーカイブはこちら

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