オーダーブックで読み解く外為市場

ワクチン開発、米の追加経済対策への期待感続くか 欧州発の材料にも注目

OANDA FXラボ編集部
OANDA FXラボ編集部

 先週の外国為替市場は新型コロナウイルス用のワクチン開発や米国の追加の経済対策への期待感が根強く、リスク選好の円安、ドル安地合いが続きました。

 ただし、依然として欧米を中心に感染者数の拡大に歯止めがかからない状況が続いており、今週も同様に楽観的な状態が続くかを見守りたいところです。

また、今週は欧州中央銀行(ECB)理事会やEU首脳会談といった欧州発の材料に市場の注目が集まりそうです。

 ECBは今回の会合で追加緩和を行う可能性が高いと市場では予想されており、緩和の規模次第では発表直後に不安定な推移となる可能性があるため、注意したいです。

 また、高値圏での推移が続くユーロの水準に関してのコメントが出てくるかにも注目が集まりそうです。ユーロ高をけん制するようなコメントが出てくるとユーロの上値圧迫材料となりそうです。

 EU首脳会議は英国との通商協議、EUの復興基金等に関して進展があるかに注目が集まり、最新の報道に欧州通貨が振り回される可能性が考えられそうです。

ドル円は103.65-104.75付近のレンジに注目

 では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。

 オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。

 ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。

 先週のドル円は序盤こそ底堅い推移となったものの、後半は失速し、週間を通して方向感の鈍い動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、買いポジションの比率が66%と高い状態が続く中、その多くが含み損を抱えており、反発に転じた場合は安堵の利益確定の売りが増え、上値を圧迫し、また、安値を切り下げる動きとなった場合は、損切り(損失拡大を防ぐための決済取引)の売りが増え、上値の重い状況が続く可能性を見出すことができそうです。

 ただし、先週は方向感の鈍い動きが続いたこともあり、1米ドル=103.65~104.75円付近のレンジで構築されたポジションが売買双方で多く、この価格水準を上抜ける動きとなると、苦しくなった売りポジションの損切りを絡めて、短期的には底堅い推移が続く可能性を見出すこともできそうです。

ユーロドルは短期的には下押しにも要注意

 先週のユーロドルは上昇基調が続き、1ユーロ=1.21米ドル台後半まで上昇となりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、売りポジションの比率が62.4%と高い中、高値圏で推移していることもあり、その多くが含み損を抱えており、下押しした水準では、安堵の買い戻しが増え、また、高値を切り上げる動きとなると、損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性を見出すことができそうです。

 一方で、先週末の伸び悩みにより、含み損を抱えた買いポジションも少し増えており、下押しに転じるとこれらのポジションの損切りの売りが増え、下落を後押しする可能性にも注意が必要となりそうです。

ポンドドルは踏ん張れるかに注目

 先週のポンドドルは底堅いものの、上値の重さも意識させられる動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、売りポジションの比率が少し多い中、上昇基調が続いていたことにより、依然として含み損を抱えた売りポジションが多く、下押しした水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると、損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性を見出すことができそうです。

 一方で、直近の伸び悩みで含み損を抱えたポジションも増えており、下押しが続くと、これらのポジションの損切りの売りが増え、下落を後押しする可能性にも少し注意が必要となりそうです。

【OANDAのオーダーブック】

オープンポジションはここに注目!

 相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。

これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。

 例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。

 損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。

 オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。

オープンオーダーはここに注目!

 前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。

 オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。

 損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。

世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?

 トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。

 OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。

 これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。

※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。

本記事に掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。

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OANDA FXラボ編集部 OANDA Japan株式会社
世界各国に拠点を持つFXブローカー
1995年に世界で初めてインターネットを利用した無料の外国為替レート情報の提供を開始したOANDAの日本法人。創業当初から、正確で透明性の高い優れた為替レートを提供するため万全のインフラを整え、取引環境の改善を行ってきた。現在では世界8カ国にオフィスを構え、そのサービスは世界中のトレーダーに利用されている。

【オーダーブックで読み解く外為市場】はOANDA FXラボ編集部が投資判断の参考として外国為替市場の動向を読み解く連載コラムです。更新は原則毎週火曜日。アーカイブはこちら

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