教育・子育て

小学校の「35人学級」実現の見通し 3密回避、迫られた対策

 令和7年度までに小学校の全学年で35人学級が実現する見通しとなった。今回のタイミングは教室の「3密」回避など新型コロナウイルス対策に迫られた形だが、中学校は対象とならず、義務教育の中で学習環境に格差の広がりが懸念される。増員に伴う教員の質をどう確保するのかも課題とされ、効果の実証には高いハードルが待ち構えている。

 「隣の建物(財務省)の壁は高かった」。萩生田光一文部科学相は17日、報道陣に財務相との閣僚折衝の感想をこう表現した。

 文科省は当初、「30人学級」を掲げ予算獲得に臨んだが、財務省は少人数化による効果の検証が不十分なことなどを理由に反対。直前まで平行線をたどり、最終的に「35人学級」という妥協点で落ち着いたのは15日夜だった。文科省幹部は「本当に今日という日を迎えられるのかと思っていた」と苦笑いする。

 文科省は以前から、少人数学級の拡充を目指すも財源の壁に阻まれてきた。平成27年度以降は概算要求してこなかったが、この時期に再び少人数学級の推進を打ち出したのは、学校現場のコロナ対策が喫緊の課題に浮上したためだ。

 例えば一般的な教室の広さは63平方メートル(縦9メートル、横7メートル)で、40人学級では子供同士の十分な間隔確保が困難な状況だった。さらに、コロナ禍で一部の学校で、分散登校による一時的な少人数学級が実現した自治体側からは不登校の解消などの事例も報告された。

 9月には政府の教育再生実行会議が少人数学級を推進するよう要請する中間答申をまとめたほか、その後も与党や地方3団体(全国知事会、全国市長会、全国町村会)などが次々と同様の要望をした。文科省幹部は今回の合意を「痛み分け」とした上で、「例年の教育効果だけをめぐるやり取りとは状況が違っていた。実際に現場を抱える自治体が声を上げたのが大きい」と振り返る。

 約17万人の小学生を抱える横浜市教育委員会の担当者は「これまでは各自治体が独自に負担するしかなかったが、財源的な措置が取られたことは良かった」と前向きに捉えた。

 ただ、中学校での導入は見通しが立っておらず、学習環境について小中学校間での格差やスムーズな接続に支障をきたすことも懸念される。さらに35人学級化に伴い、最終的に約1万4千人の教職員が増員されるが、教員志望者が減少する中で教員採用試験の競争率低下が一段と進むことが予想され、優秀な人材を確保できるのかは不透明だ。

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