受験指導の現場から

中学受験に備え「1月は学校を休む」風潮ってどうなの? 意表を突かれた親の一言

吉田克己
吉田克己

 かれこれ10年、受験塾の講師を務めながら、つい最近になって認識を改めたことがある。

 「入試直前の時期は小学校を休む」という受験生(小6)は、必ずしも少数派ではないどころか、多数派らしい。なぜ「らしい」かと言えば、塾では話題に上らないからだ。筆者も「正月明けから本命校受験日までのあいだ、学校に行ったほうがよいか、受験勉強に専念したほうがよいか」といった相談にあずかったことはない。塾としても、たとえ保護者から意見を求められても、「それはご家庭の判断ですね」の一言で済ませるはずだ(下心がない限り)。

 さて、1月登校の是非に、改めて筆者の目が向いたことには理由がある。

 今年度、個別指導では2名の小6生を受け持っているのであるが、その一方のご両親から、「1月は学校に行かずに受験に専念するのが普通らしいので…」と、不意を突かれたのが事の発端である。

 たしかに、このご家庭(以下、A家)の第一志望校の入試日は1月のど真ん中で、3学期の始業式から受験日まで10日足らずである。現下のコロナ禍を鑑みれば、少なくとも今年度については、賢明な判断かもしれない。

 もう一方のご家庭(以下、B家)にも、それとなく聞いてみたところ…「本人が、『1月は始業式だけ行って、あとは休む』と言っています」という。こちらのご家庭の場合、第一志望校の入試日は2月1日である。

 「この子、独りで家にいて大丈夫だろうか?」…そんな心許なさから、「たまには体を動かしたほうがいいよ。体育がある日だけでも学校に行ったら?」と本人に水を向けつつ、しっかりと計画を立てて親子で話し合うように促した次第。

学校へ行かない生徒はまさか独りで在宅?

 じつは、A家、B家とも共働き世帯である。だからなおのこと「大丈夫かな?」なのだが、ひょっとすると、3・4月の休校期間が図らずも予行演習になっていて、子ども自身に「独りでも大丈夫」という確信があるのかもしれない。

 そこで、昨年度以前に受け持っていた、当時小6生だったご家庭にヒアリングを試みた。本人はどうしていたかだけでなく、同じ小学校の同級生の動向についても。

 例えばC家(山手線の少し外側)の場合、受験する本人は「学校には行く!」と言って、入試日直前まで登校していたそうだが、聞けた話では、概ね以下のような状況だった。

  • インフルエンザに対する警戒も兼ねて、受験生の多くは、入試日の1週間くらい前から学校を休む
  • 少数ではあるが、1月はまったく登校しない生徒もいる
  • 学校へ行かない生徒の中には、午前中から塾へ行って勉強する生徒もいる
  • 共働きの核家族世帯が、子どもを独りだけで家に置いておくという例はほとんどなく、両親の代わりに祖父母が食事などの面倒を看ている

 前述のA家やB家で聞いた話を併せると、例年の中学受験生は、年始から入試日直前までのあいだ、あるいは入試日直前の1週間程度は学校に行かないのが多数派であり、今年度はコロナ禍でその傾向が強まっている、ということになりそうだ。

 また、大手塾であれば平日は14時に門が開くのが一般的なのであるが(数年前までは11時開門が一般的だったが、「働き方改革」を受けて長時間労働が是正されている)、個人経営の塾だと午前中から自習室を開放してくれたり、質問に対応してくれたりするところもあるようだ。

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