受験指導の現場から

合格者数の水増しに大手が“メス” 「信用ならん」塾を選んでいいのか

吉田克己
吉田克己

 業界関係者にとっては「さもありなん」「ついに」「ようやく」といった感だったのだが、筆者は、告発社全19社のなかに中・高受験最大手(首都圏)のW塾が名を連ねていたことに刮目した。R塾の東京へのなりふり構わない進撃が、W塾の警戒、嫌悪感を誘っていたことの裏返しであろう。

学習塾協会が示す「合格実績の基準」とは

 都立中高一貫校においては特に、先のケースと同様の懸念が存在する。同様の懸念と言っても、「強引な勧誘」とか「生徒を利用」といった悪質な話ではなく、塾によって合格実績に算入する生徒数の基準が大きく異なるため、業界全体として保護者の信頼・信用を損なっているのではないかという懸念である。

 この点については、ブロガー(受検ウォッチャー)もここ数年で塾別の合格者数の見方を変えてきている。おそらく―ではあるが、学校別に各塾の合格者数を合計すると、定員を大きく超えてしまうことに気づき、疑念を持ち始めたといったところではないか。

 実際、全国学習塾協会は、「合格実績」に関する自主基準の改正について、2019年2月25日に全国の塾事業者へ周知しており、合格実績に含むことのできる塾生徒の範囲を「受験直前の6カ月のうち、継続的に3カ月以上在籍し、かつ受講時間数が30時間を超える」と規定している。

 つまり、これを大きく逸脱する合格実績基準を採用している塾は「信用ならん!」ということになりかねない。

 敢えて名指しはしないが、「都立に強い」を標榜する某塾は、合格実績の基準を「10時間以上の指導実績のある生徒のみを合格実績にカウントしています」と謳っている。う~ん、これってどうなのか? 「のみ」って? R塾のような悪質さは感じられないものの、確信犯的な臭いがしないでもない。

 実際、ここ数年、2月3日には地元の都立中高一貫校の入試応援(門前激励)に参列していたのであるが、たしかに同塾からの受験生数は塾別では最多である。とは言え、2番手、3番手の塾の5倍を超えるようなスケールではない。

○○した「だけ」の生徒を合格実績に含める塾に通わせる?

 私見ではあるが、合格者数は分母の人数と属性がはっきりしていないとあまり意味がないと考えている。「講習会に参加したことがある(だけ)」「主催する模試を受けたことがある(だけ)」という生徒が、他の塾とダブルカウントされることには合点がいかない。

 彼の国の大統領選を他山の石とするではないが、「都立に強い」塾が、R塾を見て我が振り直すのかどうか…。合格実績の基準が協会基準から逸脱していないかどうかも、次年度の塾選びの参考にすべきかもしれない。

 業界人として、「殷鑑遠からず」を肝に銘じたい。

京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「ダイヤモンド・オンライン」でも記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら

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