先週のFX市場は米国のパウエルFRB議長のコメントにより、金融緩和の長期化が意識されたこともあり、米ドルが軟調な推移となりました。
これに対し、イタリアの首相にドラギ元ECB総裁が就任する可能性が好感され、ユーロに買いが入ったほか、ワクチン接種が進む英国のポンドが底堅い推移となりました。
今週は各国で経済指標等の発表が続きます。米国では、FOMC議事録、小売売上、鉱工業生産、中古住宅販売件数などの経済指標、ユーロ圏では、各国のPMI速報値、ドイツのZEW景況指数、本邦では消費者物価指数、英国では消費者物価指数、小売売上高等の発表が予定されており、将来の金融政策の手がかりを求めて注目が集まりそうです。
ドル円は利益確定売りにも少し注意
では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。
オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。
ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。
先週のドル円は上値が重く、1米ドル=104円台中盤まで下押しましたが、その後は底堅く、105円台を回復する動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、買いポジションの比率が65%台まで増加する中、価格の上昇により、含み損を抱えた売りポジションが増えており、下押した水準では安堵の買い戻しが増え、また、高値を切り上げる動きとなると損切り(損失拡大を防ぐための決済取引)の買いが増えることが想定され、底堅い推移が続く可能性を見出すことができそうです。
一方で、直近の反発で含み益のある買いポジションも少し増えており、上昇した水準ではこれらの利益確定売り、下押しが続くとこれらのポジションの損切りの売りが増える可能性にも少し注意が必要となりそうです。
ユーロドルは均衡がいずれに崩れるかに注目
先週のユーロドルは反発に転じ、1ユーロ=1.21台を回復する動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、売買のポジション比率が売りに少し傾く中、反発に転じたことで、グラフの形が菱形に近い形となっており、売買の力が均衡するような状況となっており、鈍い動きが続く可能性が考えられそうです。
ただし、均衡が崩れ、苦しくなった売買のいずれかのポジションが絞り出されるような展開となると、方向感が出てくる可能性を見出すこともできそうです。
ポンドドルは上昇基調が続くかに注目
先週のポンドドルは底堅い推移が続き、1ポンド=1.28米ドル台中盤まで上昇となりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、売りポジションの比率が61%台まで上昇する中、そのほとんどが含み損を抱えており、下押した水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると、損切りの買いが増え、上昇を後押しすることが想定され、もう一段の上昇余地は残されているように見えます。
ただし、少し前の水準で構築された含み益のある買いポジションも増えており、仮に高値を切り上げ、売りポジションの損切りが一巡するような動きとなった後は、利益確定の売りが増える可能性にも注意が必要となりそうです。
【OANDAのオーダーブック】
オープンポジションはここに注目!
相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。
これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。
例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。
損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。
オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。
オープンオーダーはここに注目!
前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。
オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。
損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。
世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?
トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。
OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。
これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。
※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。
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