主要通貨の値動きは、方向感を欠く動きが続く中、米国長期金利が上昇したことを受けて、米ドルが比較的強い推移が続いています。
昨今のFX市場では、米国長期金利の動きに注目が集まっており、米ドル中心の相場となることが増えており、今週も同様に米国債市場の動向に反応する相場が続くことが想定されます。
また、今週は米国の上下院でパウエルFRB議長のコメント機会が予定されています。先週のFOMCの内容から大きな変化は期待できないと思いますが、コメント内容に市場が過敏に反応する可能性もあるため、注意したいです。
経済指標は米国で耐久財受注や個人消費支出が予定されていますが、追加の経済対策、ワクチン接種への期待感が強い状態が続いているため、冴えない結果となったとしても影響は限定的となる可能性が高いと考えられます。
このほか、欧州では各国のPMI速報値、ドイツのIFO景況指数の発表が予定されています。景況感が改善を示していれば、ユーロの下支え材料、冴えない結果となると、ユーロの上値圧迫材料となりそうです。
■ドル円は下押しが続く可能性あり
では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。
オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。
ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。
先週のドル円は高値圏で伸び悩む動きが続き、1米ドル=108円台後半で週末を迎えました。
OANDAのオープンポジションを見ると、売買のポジションの偏りは少ない中、下押しにより、含み損を抱えた買いポジションが少し増えており、反発した水準ではこれらのポジションの利益確定売りが増え、また、安値を切り下げる動きとなると損切り(損失拡大を防ぐための決済取引)の売りが増えることが想定され、上値の重い推移となる可能性を見出すことができそうです。
一方で、上昇基調が続いたことにより、含み損を抱えた売りポジションも多く、下押した水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると、これらのポジションの損切りの買いが増える可能性にも少し注意が必要となりそうです。
■ユーロドルは上値の重さ残る可能性あり
先週のユーロドルは、下げ渋るものの、上値も重い推移が続きました。
OANDAのオープンポジションを見ると、売買のポジション比率の偏りは比較的少ない中、安値圏で推移していることもあり、含み損を抱えた買いポジションが増えており、反発した水準では利益確定売り、安値を切り下げる動きとなると、これらのポジションの損切りの売りが増え、下落を後押しすることが想定され、上値の重い状態が続く可能性を見出すことができそうです。
■ポンドドルも均衡がいずれに崩れるかに注目
先週のポンドドルは1ポンド=1.378~1.4米ドルの価格レンジ内で方向感の鈍い推移が続いています。
OANDAのオープンポジションを見ると、売買の偏りは少ない中、下押しにより、含み損を抱えた買いポジションが増えており、反発した水準では利益確定売りが上値を圧迫、安値を切り下げる動きとなると、損切りの売りが増え、上値の重い推移となる可能性を見出すことができそうです。
【OANDAのオーダーブック】
オープンポジションはここに注目!
相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。
これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。
例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。
損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。
オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。
オープンオーダーはここに注目!
前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。
オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。
損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。
世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?
トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。
OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。
これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。
※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。
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