明治大学発スタートアップ企業のミートエポック(川崎市)は19日、人体に無害な菌を使って肉や魚を安全に熟成(エイジング)する一般消費者向けの食品保存用シート「発酵力(はっこうりき) オイシート」を新たに開発したと発表した。「エイジングシート」の仕組みを応用。冷蔵庫で保存すれば消費期限より5日間長く保存できるうえ、熟成されることで美味しさや食感が増すという。22日からクラウドファンディングで販売を開始する。
肉や魚を安全かつ簡単に熟成
エイジングシートとは、肉や魚の熟成に必要な有用菌の胞子を、「ミートラップ」と呼ばれるレーヨン素材の布に付着させたもの。ミートエポックと明大が共同で特許を取得し、安全で迅速に発酵熟成肉を製造できる日本初の技術として、2016年7月に実用化された。
製造環境の整備や腐敗リスクから、熟成肉や熟成魚の製造はこれまで「プロの技」とされていた。だがエイジングシートは、付着させた菌が短時間で増殖することで肉の熟成を促進。さらに「酸化速度抑制効果」で食品の変色・腐敗を遅らせることができるという。
新たに発売されるオイシートは、エイジングシートを家庭用に加工。業務用のシートは1メートルだが、オイシートは33センチ×20センチと使いやすいサイズにした。
同大微生物化学研究室の村上周一郎教授によると、菌の増殖を調整するなどして安全性も向上。スーパーで買った肉や魚は2~5日ほどで腐敗するが、オイシートでくるんだ上にラップを巻き、冷蔵庫に入れて保存すれば、消費期限から5日間保存期間を延ばすことができるという。
オイシートを使った保存には、牛肩ロースやバラ肉など脂身が多めのものが向いているという。魚は切り身の状態での使用を推奨。熟成刺身のほか、焼魚に使用してもプリっとした食感が増すとしている。シートは冷蔵庫での保管で、製造日から2カ月を使用期限としている。
ミートエポックの跡部美樹雄社長は「一般家庭で広く使われることで、フードロスの問題への解決の一助となる。一方、熟成という技術を手軽に家庭に持ち込むことができると考えている」と語った。
オイシートはクラウドファンディング「CAMPFIRE」で5枚入り4000円で発売。現在は手作業でシートを生産しているが、クラウドファンディングで集まった資金で自動化し、生産効率を高めたい考えで、跡部社長は「将来的には、1枚100~200円程度の価格にしてスーパーなどでも取り扱い、一般家庭により身近なものにしていきたい」と話した。