自営業者が抱えるリスク
傷病手当金と障害年金、2つの公的な保障制度についての説明を聞いた深田さんは、「これじゃ生活難しいですね。対策をとらないと」といった厳しい受け止め方です。自営業の深田さんが抱えているリスクとして、
- 傷病手当金は受給資格がないため、働けなくなったその日から収入が途絶えること
- 障害年金も働けなくなった時から1年6カ月経たないと受給できず、しかも障害基礎年金(国民年金)のみで会社員・公務員よりも少ないこと
が浮き彫りとなります。家族をもつ自営業者の場合、公的な制度だけでは補いきれない場合が多いのです。
そこで、深田さんが関心を持っている生命保険会社、つまり民間の「就業不能保険」を見てみましょう。
民間の就業不能保険は受給条件などをしっかり確認したい
生命保険会社が提供する保険は商品で、内容も千差万別です。加入に当たっては受給条件をしっかりと確認する必要があり、注意点やポイントは次のとおりです。
(1)所定の就業不能状態にならないと受け取れない
入院している状態はもちろん、医師の指示により自宅において、軽い家事および必要最小限の外出を除いて、治療に専念している状態も就業不能状態となります。細かな定義は保険会社によって異なりますので注意してください。
(2)家計の不足額をじっくり考えて給付月額を設定する
受給対象外の期間(申込時に60日と180日のいずれかを選ぶ、180日は保険料が割安)があり、それを超えて就業不能状態が続くと月額10万円、15万円、20万円など設定金額が、保険期間満了(60歳、65歳などの年齢満了や、20年、25年といった期間満了がある)まで適用されます。ただし、一度給付条件に該当すれば、保険期間満了まで受け取れるタイプと、就業不能状態から回復し、働き始めるとストップするタイプもあります。
(3)加入にあたり留意すること
うつ病などの精神疾患は対象外とする就業不能保険が少なくありません。精神疾患は療養が長期間にわたりやすい病気ですので、保険によりカバーしたい場合は、加入前にしっかりと確認しておく必要があります。
これら民間の就業不能保険に関する説明を聞いた深田さんは、「3カ月くらいの生活費は貯蓄で何とか凌げるので、受給対象外期間を60日で設定すればいいな」「就業不能保険のパンフレットを取り寄せよう」との反応で、自分が働けなくなったときの万が一の備えとしてすべきことが見えてきたようです。
最後に
病気やけがなどにより長期間働けなくなるリスクへの備えを見てきました。自営業者は会社員よりも、公的な就業不能保障が弱いので、民間の保険でカバーする必要性が高いことも浮き彫りとなりました。ただ今回の深田家は、子どもが小さく妻が働けないケースでしたが、子どもが成長して働くことができる家庭もあるでしょう。それぞれの家庭で必要な備えは違ってくるのです。
新型コロナ禍で不安定な生活が続きますが、将来に向けて、家族で病気やけがで長期間働けなくなるリスクを話し合い、必要と思われる備えに取り組んでみてはいかがでしょうか。
【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら