ヘルスケア

ワクチン「打ち手」拡大へ 研修の充実を

 新型コロナウイルスのワクチン接種の打ち手不足の解消に向け、救急救命士や臨床検査技師の活用の検討が始まっている。先行する形で今月から歯科医師による接種が特例で始まっており、拡大により接種の迅速化が期待される。だが、医療職の中では注射の経験値などに違いがあり、業界団体からは接種に向け研修の充実を求める声も上がっている。(本江希望、石原颯)

 「筋肉注射は30年ぶりだったが、研修を行った上で臨んだので順調に行うことができた」。神戸市歯科医師会の専務理事で、歯科医師の杉村智行さん(60)は25日、市独自の大規模接種会場で打ち手として参加した。「口内に打つ注射と大きな違いはあるが、注射器の扱いには慣れており問題ない」

 本来、ワクチン接種は医師法により医師と看護師しか行うことができない行為とされているが、厚生労働省は医師や看護師が不足している地域で、研修を受けていることなどを条件に歯科医による接種を特例で認め、活動を始めている。更なる打ち手確保のため、加藤勝信官房長官は臨床検査技師や救急救命士が接種を行えるよう検討することを表明している。

 全国救急救命士教育施設協議会代表理事で国士舘大大学院救急システム研究科の田中秀治教授は救急救命士について「ワクチン接種の打ち手としてのポテンシャルは高い」と強調する。田中氏によると、静脈路確保の際に針を静脈に刺すことがあり、実習などで学んでいる。田中氏は筋肉注射よりも難易度が高いとし、研修を受ければ対応が可能とみている。 

 医師の指示で検査を行う臨床検査技師は血液検査で採血を行うことが認められている。日本臨床衛生検査技師会の横地常広副会長は「われわれも医療の一角を担う職種。感染拡大を抑えるためのワクチン接種にできる範囲で精いっぱい協力したい」。

 ただ「採血と筋肉注射は全く違う行為」と指摘した上で、「しっかり研修を受けた上で参画すべきだ」と強調した。

 河野太郎ワクチン担当相が担い手確保に向けて活用検討に言及したのは、薬剤師。外国では薬剤師による接種もあるが、日本薬剤師会によると、日本では注射器を使うことがなく、使い方は資格取得に向けて座学で扱う。薬剤師は全国30万人超いるが、日本薬剤師会の山本信夫会長は接種の担い手となるには充実した研修が必要との認識を示す。

 「従来であれば自分たちの領域ではないと思っていたところ。なかなか容易ではないが、要請があれば対応できるように準備を進めていく」

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング