受験指導の現場から

『ドラゴン桜』は「生徒の好奇心を刺激しろ!」と説くものの…それが悩ましい小5理科の鬼門

吉田克己
吉田克己

 さらに翌年、やはり男子生徒と、こんなやり取りがあった。授業終了直後にテキストを片手に教卓のところまでやってきて、「…の体内に精子を送りこむって、どうやるんですか?」と聞く(その直後に、受精に関する説明がある)。念のためであるが、小5の男子である。表情からしても、単純な疑問(好奇心)であることに間違いない。

 この時は迂闊にも一呼吸置いてしまったのだが、「先生には子供がいないからわかんないなぁ。お父さんか学校の先生に聞いてみたら」とかわす。が、しかし、かわしたつもりが、「お父さんに聞いても、教えてくれないんです」と、二の矢を放ってくる。〈お父さんに聞いても、そりゃあそうなるか…〉と思いつつ、「じゃ、次の授業までに調べておくよ」と先延ばしにしてしまった。結果、翌週の授業後に「せんせー、あれどうなりました?」と再質問されてしまったのであるが…。

中学受験を控える家庭におすすめしたい対処法

 中学受験に向けて、子供の勉強を看ている母親は多いだろう。とくに小4・小5のうちは多いはずだ。もし小5の息子に上記のような質問をされたら? 

 同単元に関して女の子が父親に何か聞いてくることはまずないだろうが、男の子は母親と父親のどちらかに単純な疑問をぶつけてくることは十分にあり得る。その時になって、不適切な対応をしなくて済むように(心の)準備をしておくに越したことはない。

 一方で、実際問題として、この単元が中学入試で出題されるのかどうかも肝腎なところである。

 たしかに、女子校ではそれなりの頻度で出題されているが、男子校・共学校で本格的に出題されたことは、筆者の知る限り、ここ10年ほどで1校しかない(大学付属の男子校)。

 よって、この単元の授業を行う際も、「この単元は、男子校・共学校ではほとんど出題されることはないので、男子は聞き流していてもまず問題ないよ」と冒頭で言ってしまうこともある。

 家庭での対処としても、そういった説明をして、好奇心の源を損なわないようにしながら、ほかの単元に目を向けさせるようにできるとよいかもしれない。

京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「ダイヤモンド・オンライン」でも記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら

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