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先行販売は即日完売…川崎重工の電動三輪車「ノスリス」 実際に試乗してみた

SankeiBiz編集部
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 安全走行を生み出すバイク由来の機構

 300メートルほどある社屋の外周道路で試乗した。乗り始めた当初こそ、体験したことのない操作感に少し戸惑いを覚えたが、周回を重ねるたびに慣れ、心地よくなった。

 その理由は車体を傾けた際に前2輪が傾く構造にあると気づいた。モーターサイクルの技術を応用した「ティルト機構」で、最大30度まで傾く前輪が安定性を生み出しているのだ。コーナリングや少しの段差でもバランスを保って走行することができるのは、この機構のおかげだろう。

 バイクになじみのない身としては、最初は不慣れな動きにブレーキを握る手にも力が入った。ただ、ティルト機構が描く軌道に体の動きを合わせられるようになると安定してスピードを維持できるようになった。

 自転車のような親しみやすい外観ながら、4輪の乗り物ようなどっしりとした安定感もある。日本の道路事情や道交法に適応しながら乗り手の安全走行をサポートする、いわば“賢いマイクロモビリティ”といった印象だ。ノスリスは自転車より車幅が広いため、車道上での存在感を自覚して運転する必要があるが、心細さはない。ただ、車線の多い道路の交差点で小回り右折する場合、周囲の車に合わせてスムーズに合流できるかなど、今回の試乗では体験できなかっただけに、その点は不安も残る。

 クラウドファンディングはフル電動モデル、電動アシストモデル各50台で計100台を発売し、いずれも即日完売となった。2022年度以降の市場導入に向けたテスト販売だったが、この反響にプロジェクトリーダーの石井さんは「目標1~2週間、できれば1カ月以内には完売したい程度の感覚だったが…」と驚きを隠せない。一方で、「自分達が考えていたニーズが実際にあると実感した。ノスリスなら従来のマイクロモビリティではカバーできなかった人たちの生活をより豊かにできる」と確信する。

 本格販売に向け、さらに購入者からのフィードバックを反映しながら改良を進める。「Nos liberi sumus」(私たちは自由だ)というラテン語を由来とするノスリス。この思いがどのような完成形となるのか、今後の開発に注目したい。

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