書評

『干す 日本の天日干しをめぐる』西村豊 写真・文

 ■太古の祖先をも感じる写真集

 古民家の軒下を埋め尽くす干し柿が圧巻だ。太陽の光に当てて乾かす「天日干し」をテーマに、ノスタルジックな風景を収めた写真集。塩漬けにした赤い唐辛子を雪の上でさらす珍しい場面もある。

 自然写真家の著者は15年で46カ所を取材。対象は豆腐、稲、餅、サケ、ホタルイカなどと幅広く、中には意表を突く物も。一部の光景は既に失われている可能性があり、貴重な記録となっている。

 食材を干せばうま味が凝縮され、保存性も高くなる。日本列島では縄文時代から魚介の干物が作られていた。何千年も昔の祖先とのつながりを感じる一冊だ。(光村推古書院、2640円)

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング