教育・子育て

「これが世界か」「すごいプレー」 子供たちが見た五輪夢舞台

 「これが世界か」「すごいプレーだ」。子供たちは、歩いてスタジアムへ向かった。そして小さな目に焼きつけた。東京五輪の開会式を翌日に控えた22日、鹿嶋市のカシマスタジアムで、地元の児童・生徒たちが「学校連携観戦プログラム」でサッカー男子の韓国対ニュージーランド戦を観戦した。新型コロナウイルス感染拡大で一時は開催も危ぶまれたが、子供たちは目の前で見た夢舞台に興奮を隠せずにいた。

 5校1100人が観戦

 東京都に4回目の緊急事態宣言が発令され、ほとんどの自治体が無観客での試合を余儀なくされた。茨城県では「学校連携観戦チケット」を持つ児童・生徒らが観戦できることになり、期間中に23校の約4千人が観戦する。

 この日は、5校の約1100人が観戦。スタジアムから500メートルほどの場所にある鹿嶋市立波野小では、全校児童383人のうち約250人が参加し、徒歩で会場へ向かった。

 児童らは「スタジアムはすぐ近所。ここで、五輪が開催されてうれしい」「観戦できて一生の記念になる」などと興奮気味に話した。

 スタジアムに入れないのを知りつつ、五輪の雰囲気だけでも味わいたいと駆けつけた千葉県成田市の会社員、伊藤健司さん(22)は「学校のみんなで見られるなんて、鹿嶋の子供がうらやましい。大人になってからその本当の価値が分かる」と話していた。

 2週間前から体温記録

 新型コロナ対策で子供たちは2週間前から体温や体調を記録し、スタジアムの座席は前後左右を1席ずつ空け、ほかの学校とは通路で区切った。多くの児童・生徒らはバスで到着し専用ゲートから入場。やや緊張しながらも、一様に世界的イベントを地元で観戦できる喜びをかみしめていた。

 感染対策で観客席では声を出すことができない。子供たちはチャンスが訪れる度に、大声の代わりに、自作の国旗や「Let,s go!」「Don,t give up」などと書いた応援メッセージをちぎれんばかりに振って“声援”を送っていた。

 中には興奮のあまり「あーあ、惜しい」と声を出してしまい、慌てて口を押える姿も見られた。

 「国の代表、こういうことなんだ」

 鹿嶋市のボランティアの男性は(66)は「世紀の祭典が地元で開かれて感慨深い。子供たちには、試合の雰囲気を通じて何かを感じて大人になってほしい」と話していた。

 試合はニュージーランドが勝利。観戦後、いずれも鹿嶋市立三笠小6年の草野泰慈さん(12)は「テレビで見るより迫力があってよかった。五輪を見るのは初めてで、いい思い出になった」。吉田愛莉さん(12)は「あまり興味がない私でも、引き込まれるような試合だった。国の代表がやっているって、こういうことなんだ」。

 大人たちの思いは、確実に子供たちに伝わったようだ。(篠崎理)

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