ヘルスケア

台頭するデルタ株 ワクチン「有効」も対策必要

 国内の新型コロナウイルスの新規感染者数が、首都圏を中心に相次いで過去最多を更新している。急速な感染拡大の背景にあるとされるインド由来の変異株「デルタ株」は「これまでで最も感染力の強いウイルスの一つ」とも言われ、ワクチン接種が先行する海外でも拡大が懸念されている。専門家は「ワクチンの重症化予防の効果は保たれている」とした上で「接種後も対策が必要」としている。

 「先週からコロナ患者が急に増え始めた」。埼玉県済生会川口総合病院の佐藤雅彦院長は、感染再拡大の兆候を語る。年始の感染第3波では高齢者も多かったが、3日現在の入院患者21人は全員30~50代。9割は中等症以上で、一時、集中治療室(ICU)に入る患者もいた。佐藤院長は「人流が抑制されていないことに加え、デルタ株の影響もあるのでは」とみる。

 デルタ株は、従来株に比べて感染力が強いとされた英国由来の「アルファ株」よりもさらに1・5倍感染しやすく、重症化リスクも従来株より高い可能性が指摘されている。国立感染症研究所などの試算では、首都圏の陽性例のうち、デルタ株の割合は増加し、8月中にはほぼ同株に置き換わると推定されている。

 デルタ株は世界的に猛威を振るい、現在130以上の国・地域に拡大。米国では新規感染者の8割、英国でも9割を超えた。

 米国では7月、デルタ株を主流とする感染者集団で、ワクチン接種後の感染を意味する「ブレークスルー感染」を確認。米疾病対策センター(CDC)は、水痘(水ぼうそう)に匹敵する感染力があるとの見方も示しており、接種後は原則不要としていたマスク着用の指針を復活させた。

 人口の半数以上がワクチン接種を終えたイスラエルでも、デルタ株の感染が拡大。イスラエル当局は、ワクチンの感染予防効果が、接種後の時間経過とともに弱まっていると発表。今月、一部の市民を対象に3回目のワクチン接種を始めた。一方、ワクチンの重症化予防の効果は、デルタ株の流行下でも従来と同水準の90%程度を維持していることが確認された。

 大阪大の忽那賢志(くつな・さとし)教授(感染制御学)は、ワクチンはデルタ株に対しても「有効」とした上で、「接種した人でも感染を広げる可能性がある。油断せずに、感染対策を続けることが重要だ」と話す。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング