まさかの法的トラブル処方箋

「相続争い」…それは単にお金のもめ事に非ず 紛争の火種を残さないために

上野晃
上野晃

 相続争いは家族の負の感情の積み重ね

 こうした相続争いは、それまで過ごしてきた家族の負の感情の積み重ねの結果なのです。それまでは、何となく争いを避け、なあなあで過ごし、嫌なことに目隠ししてやり過ごしてきたのですが、最後に火山の噴火のようにドカンと勃発してしまう。だから、相続争いは、最後1万円程度のことでも絶対に譲らないと意地の張り合いになったりするのです。

 そう、繰り返しになりますが、相続争いは、お金の争いのように見えて、お金じゃないんです。

 「なぜ私を持って愛してくれなかったの?」

 「なぜ私を信じてくれなかったの」

 「なぜあなたはいつも私に上から目線でい続けたの?」

 そういった心の叫びがお金の争いに代わっただけなのです。

 解決法の一つは、遺言です。もちろん、ただ遺言をすれば良いというものではありません。大切なのは遺言を作るプロセスです。遺言を作る際に、私は家族の誰にも知られずにひっそりと作ることはやめた方が良いと言っています。

 むしろ家族全員に遺言を作ることを伝えて、その中身も知らせておくべきです。そしてなぜそのような遺言書を作るのか、子供たちに言って聞かせておくべきでしょう。自分がどんな考えでその遺言を作ったのか、家族に伝えておけば、家族もその遺言を尊重しようという気持ちになるでしょうし、仮に納得がいかないということであれば、生きている間に話し合いができます。そうやって家族間の理解を深める努力をすべきです。

 高齢社会が日本の家族の絆を深める契機に

 日本社会には、なあなあというか、うやむやというか、割と曖昧なまま誤魔化し続けて人間関係をつなぎ続けるという風土があるような気がします。それはそれで、日本人の「知恵」と言える部分もあるかもしれません。

 物事をひとまず曖昧なまま棚上げし、解決を将来に委ねるというのは、時に、賢明な判断だったりもします。しかし、あまりに曖昧な解決を乱発すると、それは結局、ただ嫌なことを先送りしているだけとなってしまいます。将来に紛争の火種を残すばかりか、どんどん火薬を仕込み続ける、そんな罪なことをしていませんか?

 皆さんは、家族に対して無責任になってしまっていませんか? 家族と向き合っていますか? 改めて、考えてみてください。

神奈川県出身。早稲田大学卒。2007年に弁護士登録。弁護士法人日本橋さくら法律事務所代表弁護士。夫婦の別れを親子の別れとさせてはならないとの思いから離別親子の交流促進に取り組む。賃貸不動産オーナー対象のセミナー講師を務めるほか、共著に「離婚と面会交流」(金剛出版)、「弁護士からの提言債権法改正を考える」(第一法規)、監修として「いちばんわかりやすい相続・贈与の本」(成美堂出版)。那須塩原市子どもの権利委員会委員。

【まさかの法的トラブル処方箋】は急な遺産相続や不動産トラブル、片方の親がもう片方の親から子を引き離す子供の「連れ去り別居」など、誰の身にも起こり得る身近な問題を解決するにはどうしたらよいのか。法律のプロである弁護士が分かりやすく解説するコラムです。アーカイブはこちら

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