ヘルスケア

新型コロナ感染「第5波」の医療現場 広がるネーザルハイフロー療法

 新型コロナウイルス対策で19都道府県に発令されている緊急事態宣言が13日、延長期間に入った。全国的に新規感染者数は減少の兆しが見えているが、首都圏や関西圏を中心に病床使用率は高水準で推移。患者の搬送先が決まらない救急搬送困難事案が相次ぎ、逼迫(ひっぱく)する重症病床の確保が課題となっている。重症患者を受け入れる医療現場では、限られた病床で患者やスタッフの負担軽減を図ろうとする一方、病床の集約化や機能分担の徹底を求める声が上がっている。(桑村大)

 「重症にも値する患者がいるが、受け入れられますか」。8月27日午後6時ごろ、宇治徳洲会病院(京都府宇治市)に電話が入った。

 約30分後、救急搬送されたのは50代男性。この日陽性が判明し、翌日に別の病院に入院予定だったが、府の酸素ステーションへの搬送途中、血中酸素飽和度が82%まで低下していた。

 コンピューター断層撮影(CT)検査では、両肺全体に肺炎が進行していた。「ネーザルハイフローでいこう」。当直で救急総合診療科副部長の山西正芳医師の指示で、鼻から大量の酸素を送り込むチューブが装着されると、次第に呼吸は安定していった。

 「第5波では、夜間にコロナ患者が救急搬送される事例が増えている」と山西医師。特に、「第4波」までは週に数人程度だった夜間搬送者は自宅療養者の増加に伴い、「多くて1日3~4人」で毎日運び込まれる。

 同病院は、人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)を必要とする重症患者を受け入れる府内の高度重症病床50床のうち、8床を確保。中等症以下も含めた全20床体制で治療にあたってきた。

 だが、府内の新規感染者数が500人台で推移した第5波では17~18床が埋まり、「過去最高に逼迫した状態」(同病院)が続く。新たに最大40床の専用病棟を作る計画もあるが、現状の病床は限られている。こうした中で、重症化予防に効果があるネーザルハイフロー療法の活用や、回復した重症者を転院させる「下り搬送」で病床を確保しつつ、何とかやりくりしている。

 一方、院内のコロナ対応チームを統括する松岡俊三副院長は「重症者の治療に専念したいが、いまの状況下で1病院だけでは対応に限界がある」と指摘。重症度に応じて患者を転院して治療する「上り・下り搬送」といった各病院間の連携が一層、不可欠になると強調するが、「受け入れ先の病院が決まらないなど、役割分担が今も大きな課題だ。さらなる感染拡大への対応策としては、医師らが交代制で治療にあたるコロナ専用施設の設立が必要だ」と話す。

 地域医療に詳しい城西大の伊関友伸(ともとし)教授は「コロナ治療は総力戦で、絶えず病床の掘り起こしが必要だが、これまでも地域によっては病院間で患者の受け入れや負担に偏りがあった」と指摘。「特に重症患者向けの病院は限定されるため、中等症以下の患者らを受け入れる病院との連携や、入院調整を担う機関の役割がますます重要になり、人員を投入して機能維持することが欠かせない」としている。

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