ヘルスケア

大阪、保健所介さず早期治療 「第6波」備え体制強化

 大阪府が新型コロナウイルス患者の早期治療体制を強化している。重症化を防ぐ抗体カクテル療法を宿泊療養者や自宅療養者向けだけでなく、医療機関で陽性が判明した直後に保健所を介さず投与できる枠組みを導入。保健所の業務逼迫(ひっぱく)により自宅療養者の死亡が相次いだ「第4波」の経験を教訓に、第5波だけでなく、今後到来が予想される第6波に備える。

 「ワクチンを打っていない(重症化)リスクのある患者を保健所も介さず早期に治療し、重症化を防ぐ。ここがポイントだ」。吉村洋文知事は17日、第5波以降の府の方針について、記者団にこう強調した。

 柱となるのが、抗体カクテル療法だ。対象は基礎疾患などの重症化リスクがあり、軽症または酸素吸入を要しない中等症の患者とされ、発症から7日以内の投与が求められる。

 発熱などの症状が出た場合、府が「診療・検査医療機関」に指定した診療所などで検査を受け、陽性と判明すれば、保健所を介さずに医師の判断で、外来患者向けに抗体カクテル療法を行う病院で投与を受けられる。投与する病院は21日時点で府内に36病院(うち大阪市内に13病院)あり、17日には病院を案内するコールセンターを設置した。

 保健所を介さない枠組みは第4波の反省の上に立っている。

 保健所は感染症法に基づき、コロナ患者の入院・療養先の決定や患者の健康観察、濃厚接触者らの疫学調査など幅広い業務を担う。

 3月1日~6月20日の第4波では自宅療養者が1万5千人を超え、医療を受けられずに亡くなる患者が続出。府によると、重症化率は3・2%、死亡率は2・8%だった。

 6月21日以降の第5波の重症化率は0・9%、死亡率は0・2%(いずれも今月6日時点)と第4波を下回るが、自宅療養者は最多の1万8384人に上り、大阪市内では患者への最初の連絡に最大4日程度かかった。

 吉村氏は「保健所の仕事を分担すれば府民の命を守ることにつながる。保健所がやるべき仕事を考えないといけない」と指摘する。

 府は30日に大阪市内に開設予定の千床規模の臨時医療施設でも、保健所を介さずに入所できる枠組みを検討中だ。ただ病床の確保には限界があり、医療提供体制の逼迫を回避するため、宿泊療養や自宅療養の支援体制も整備している。

 府内に31ある宿泊療養施設のうち、2施設は医師らが待機する臨時医療施設の「抗体カクテル投与室」を開設し、“病院化”した。10月以降はこれとは別の施設に診療所を併設し、同療法を投与できるようにする方針だ。

 自宅療養者向けには外来診療での投与に加え、自宅から病院まで円滑に移動できる無料の送迎システムを構築。厚生労働省の協力を得て往診時に同療法を実施するモデル事業も始めた。

 りんくう総合医療センターの倭(やまと)正也・感染症センター長は「保健所の業務が逼迫して治療が遅れるケースを除き、軽症や中等症の患者の治療法はほぼ確立している」と説明。「第6波は確実に来るだろうが、診療所などは外来診療での抗体カクテル療法に早期に結び付け、患者も発症すれば、すぐ病院に行ってほしい」と訴えた。

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