ヘルスケア

抗原検査キット過信禁物 専門家「陰性でも警戒を」

 医療用の新型コロナウイルスの抗原検査簡易キットについて、厚生労働省は近く市販を認める方向で検討している。現在、薬局やインターネットで販売されているのは未承認の「研究用」だが、容易に検査できることから利用が進んでいる。研究用は一概に精度が劣るわけではないが、誇大表示の簡易キットなどもあった。厚労省は「(研究用は)感染の有無を調べるために使用すべきではない」とし、専門家も「結果が陰性でも感染には警戒を」と利用者側に過信は禁物だと呼びかけている。(内田優作)

 陰性のはずが

 感染第5波まっただ中の8月下旬、東京都内の40代男性会社員の長男(21)が発熱した。その日は休日のため医療機関で診察が思うように受けられず困っていたところ、スーパーで千円弱で売られていた抗原検査簡易キットが目にとまった。「研究用」と書かれていたのが気になったが、男性は「試し」のつもりで購入した。

 検査は唾液を取るだけの簡単なもので数分で結果が出た。結果は「陰性」。男性は抗原検査よりもPCR検査の方が正確だとは分かっていたものの、「精度99%以上」などの文字もあり、家庭内には「かなりの確度で陰性だろう」との思いが広がったという。

 平日を待って長男を病院に連れていき、PCR検査を受けると結果は陽性の判定。男性は「陰性の結果によって、わずか1、2日でも気持ちに隙ができたのは間違いない」と悔やむ。というのも、男性の妻がその後、陽性と確認され家庭内感染となったからだ。

 行政指導も

 抗原検査はコロナウイルスに含まれる特殊なタンパク質を検知し、感染の有無を調べる手法だ。陽性か陰性かのみ判断する「定性検査」と体内のウイルスの量も測れる「定量検査」に分かれるが、いずれも短時間で結果が出る利点を持つ。

 厚労省は簡易キット18種類を「医療用」として薬事承認しているが、これらはまだ市販されていない。

 市販されているキットの中には誇大表示などで国から指導を受けたものもある。消費者庁は3月、抗原検査キットを販売する業者2社に対して「厚労省承認済み」などの宣伝文句の商品を販売していたとして、行政指導を行った。

 久留米大の溝口充志(あつし)主任教授(免疫学)は海外では粗悪な検査キットが横行、間違った検査結果によって感染が拡大したケースもあると指摘し、「国によって承認された医療用キットで検査すべきだ」と話す。

 利用機会は増

 国の規制改革推進会議では、現在は医療機関などで使用している医療用のキットについても市販化すべきだとの議論が進んでいる。田村憲久厚労相は今月10日の閣議後記者会見で「薬局で買えるような形を検討している」と述べた。

 今後の行動制限緩和策の一環で、イベント参加などの条件に簡易キットの陰性が用いられる可能性もあり、さらに利用の機会が増えることも予想される。

 これまで、簡易キットは精度の高いPCR検査や定量検査と比べ、無症状者の感染を見逃す可能性があるとされてきたが、6月に改訂された厚労省の検査指針では、留保付きで無症状者への検査も有効との見解が示された。溝口氏は簡易キットについて「他の人に感染させる可能性がある人を見つけるには効果的だ。感染者が医療機関を受診するきっかけになる」と話す。

 一方、同指針では簡易キットについて、感染していても検体のウイルス量が少なければ検知できず、陰性の結果が出ることもあるとしている。溝口氏は「どんな検査手法でも感染者を見逃すことはある。結果が陰性だったからといって気を緩めず、感染への警戒を続けることが重要だ」と強調した。

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