ヘルスケア

全国初の往診時抗体カクテル開始 経過観察に課題、現場医師「工夫必要」

 大阪府内で今月、新型コロナウイルスの重症化を防ぐ抗体カクテル療法を自宅療養者への往診時に投与する全国初のモデル事業が始まった。厚生労働省は府の試行実施を経て全国展開をめざす。投与に関わった大阪市生野区の「葛西(かっさい)医院」の小林正宜(まさのり)院長(38)が産経新聞の取材に応じ、「地域を守る医師として、治療に参戦したい」と語った。(尾崎豪一)

 17日夕、小林院長ら医師2人と看護師の計3人が府内の30代女性宅を訪れた。玄関で防護服を着用後、女性に抗体カクテル療法の効果や副反応が出た場合の対応を説明すると、安心した様子を見せたという。その場で点滴薬を作り、約30分かけて投与した。

 同療法は発症から7日以内の投与が求められる。女性は発症3日後で、往診時は発熱に加え、せきと頭痛に苦しんでいた。重症化リスクがあり、周囲に実際重症になった人がいた不安もあり、自宅での投与に応じたという。

 小林院長らは投与後、女性宅近くの車内で約1時間半待機し、電話で女性の容体が急変していないことを確認した上で引き揚げた。女性は翌日には快方に向かった。

 モデル事業の目的の一つは、府の先行事例を全国に広げることだ。小林院長は府と府医師会が連携して立ち上げた往診チームのメンバー。菅義偉首相が往診時に同療法を使えるよう厚労省に検討を指示した直後の16日夜、府医師会幹部から打診があり、同療法の説明書を読み込んで臨んだ。

 国内初の事例に「不安がなかったといえば、嘘になる」と明かす。一方で「地域を守る診療所の医師として、発熱外来の診察だけで終わるのは、もどかしい。治療まで参戦したい」と語る。

 実際に投与して見えてきた課題もある。防護服は動きにくく、点滴薬の準備に手間がかかるため、事前に調合できたほうがいい。医師らが訪問先でウイルスにさらされるリスクを低減させる工夫も必要だ。

 投与後は患者宅の近くで長時間待機する必要があるため、その時間も事実上拘束されることになり、負担が大きいという。小林院長は「患者宅にオンラインで健康状態を確認できるタブレットを置き、フォローすることが許されれば、別の患者への往診も可能だ」と提案する。

 大阪府の吉村洋文知事は24日、記者団に「国としては患者の近くでしっかりみてもらいたいだろうが、観察のための待機がどこまで必要かは検証が必要だ」と指摘。「往診が広がらず、治療を受けられない自宅療養者が増えるほうが不利益が大きい。代替措置を取れないか、国に提言したい」と述べた。

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